───「戦国時代」という時代設定も、ゲーム性と密接に、そして相互に絡んでいるように感じました。この日本的な時代設定を選択した理由と、それをワールドワイドで発売するに至った経緯などについてお聞かせください。
斎藤: マニュアルの冒頭にも書きましたが、「戦国」というのは、ワンマンの時代でした。ワンマンである指揮官の指示ひとつで、たくさんの命が投げ出された時代設定です。『大玉』は言い換えると、ワンマンであることをシミュレートするゲームです。たくさんの兵たちがわらわらと、というのが『大玉』の特徴ですが、この感覚を直感的に提示するのに、日本の戦国時代というのはもっとも適している舞台と考えました。
海外では、やや、まじめなゲームとして売られているみたいです。日本ならではのジョーク的なセンスがどこまで伝わっているのか、私にはわかりませんが、日本のユーザーたちは、これがジョークであるということに気づいて楽しんでくれているようです。
日本人の文化のレベルは高いなぁ、と思うことがいくつかあったのですが、そのひとつはこのゲーム世界が、極めてジョーク的なものであるということを受け入れて楽しんでくれている現象があげられます。海外では、まじめにやっているとまだ思われている節がありまして。
───企画からプレゼンテーション、マスターアップに至るまでの、任天堂という会社とのコラボレーションにおける面白いエピソードなどがありましたら、是非お聞かせください。
斎藤: 『大玉』では“任天堂初の試み”と言われることがいくつかあります。
縦書きや観音開きのマニュアルをつくったこと。新作であるにもかかわらず世界同時期発売だったこと。ゲームキューブのジングル(コマーシャルの開始または終了時に挿入される短い音楽)なしのCMを製作放映したこと。ゲーム内に任天堂本社が出てくるステージがあること。“任天道”などという架空の世界観と、“山之内家”という先代社長の名字をもじったような設定であること……などなど、数えたらきりがありません。そういうことには意外なくらい寛大でした。
しかし一方で、任天堂は、作品の品質にとても厳しい会社だと思いました。とくに任天堂さんがこだわったのが、「何度も遊ばれるゲーム性があるのか」ということです。一度やったら終わり、ではいけないというこだわりは制作者として大変勉強になりました。
今回の仕事を通して、任天堂さんは世間で思われている以上に、新しいものに貪欲な会社であることがわかりました。先ほども述べたとおり、このタイトルには実は、突然タイムワープして、任天堂本社から出てくる社員の方々をピンボールで拿捕し、戦場に駆り出す……という、ややもするとブラックなシーンがあります。まさかこんな提案が通るとは思っていませんでしたが、意外なことに任天堂さんは「おもしろい」ととても好意的な反応で、そのまま実現することになりました。
今回のタイトルは、これまでの任天堂さんが育んでこられた文化の上に成立しているゲームです。内容的には任天堂さんは細かいことを何も言ってこられなかったけれど、その意味ではコラボレーションと言えるのかもしれませんね。
───『大玉』や『シーマン』では、インターフェース(コントローラなどの“プレイヤーとの接点”)にも並々ならぬこだわりと、斬新さが感じられました。ニンテンドーDSが大ヒットを記録している昨今、ゲームのインターフェースは今後どうなるとお考えでしょうか。
斎藤: ゲーム機は、ひたすらメガヘルツ、メガバイトだけの進化をしてきました。ですが、それらは、これまでと同じインターフェースの中だけで活かされてきたため、ユーザーたちはすこし飽きてきている。業界がもっとあたらしい面白さ、に本気で取り組まない限り、どれだけ量的な変化があったとしても、本質はあまり変わらないと思うんです。
レボリューション(任天堂の次世代家庭用ゲーム機)のコントローラーを初めて見たとき、僕はいろんな事ができる!と思いました。ワイアレスですし。ニンテンドーDSを初めて見たときも、タッチスクリーン機能によってゲームの「質的変化」が可能なマシンだと感じましたが、レボリューションに関してもそれ以上の期待をしています。ユーザー心理という点でも、インターフェースというのはとても重要なのです。
───最後に、『大玉』をどのような人たちに、どのように楽しんでほしいか、読者にメッセージをお願いいたします。
斎藤: ゲーマーではない方で、ゲームでうさを晴らしたいという方、ひとり部屋にいるときにむさくるしい男たちの掛け声で元気づけられたい方、長々とした物語ではなく瞬間最大風速を楽しみたい方、に向いています。
ルールは、やっていただくとわかるとおり、簡単です。が、難易度は高めかもしれません。戦国において敵の将軍を倒すというのは命がけであったという、その緊張感というものを狙ってのことです。ゲームのノリは、たくさんの人とワイワイ遊ぶのに向いています。パーティーゲームあるいはアーケードゲームに近いノリですよ。
───ありがとうございました!
【関連ページ】 |
・『大玉』任天堂公式サイト |
・『大玉』特設サイト |