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やり込み要素の危険性(2ページ目)

ゲームの本編が終わってもさらに遊べるやり込み要素、今はない方が珍しいというぐらい、ほとんどのゲームについています。しかしこれが、メーカーの首をしめているかもしれません。

田下 広夢

執筆者:田下 広夢

ゲーム業界ニュースガイド

新作の仕入れと中古販売の関係

ゲームが中古で売り買いされても、メーカーには全く利益がないと言われることがありますが、果たして本当に中古はメーカーに無関係なのでしょうか?中古でゲームが売れた場合には、メーカーにはお金が一切入りません。そういう意味では、中古対策をするというのは正しいと言えます。ただしこれも、業界全体で考えた時には少し違う側面が現れます。

まず、中古販売と、新作ソフトの仕入の関係について考えておく必要があります。何度かゲーム業界ニュースでも書いていますが、ゲーム屋さんは新品ソフトを薄利で売って、中古ソフトで儲けを出しています。で、ここからが重要ですが、そうやって儲けたお金でもって、また、新品ソフトを入荷しているんです。

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お店がたくさん仕入れることができなければ、当然たくさんのユーザーにゲームは売れません。メーカーがお店を通してゲームを売る限りは、お店もメーカーも両方儲かるビジネスの構造になっていなければ、成立しません。これが、危険性その2です。

中古市場もゲーム市場

やり込み要素による中古対策は、中古市場がユーザーに対して果たしている役割をケアしていないところに、問題が隠れているかもしれません。さらにもうひとつ、ユーザーは中古を売って新品を買うという場面が少なくないことも注目する必要があります。これはどういうことか、少々乱暴ではありますが、単純化して説明してみましょう。

例えば3人のユーザーが1本ずつ新品ソフトを買ったとします。この3人はいずれもゲームが大好きで、今遊んでいるゲームが終わったら、また次のソフトを買いたい人達です。そのうち1人は次も新品ソフトを買うお金がありますが、残りの2人は新品ソフトを買うだけのお金がありません。

もしこの時、誰も中古に売らなければ、次の新品ソフトを買うのは1人です。しかし、中古市場があるとどうなるか、1人は中古にゲームを売って新品を買い、もう1人は中古でゲームを買う、という形で新品ソフトを買う人を2人に増やすことが可能です。

つまり、中古の売り買いには、ゲームが欲しいけど新品は買えないユーザーを、中古を買うユーザーと、中古を売って新品を買うユーザーによりわけて、ゲームの購入機会を増やすという効果があります。中古がある為に新品の買い控えが起こるというような指摘も間違ってはいません。上記の例でも、3人とも中古を買ってしまうという可能性があります。ただ、中古の仕組みがユーザーの購入機会を増やしているというのもまた、事実です。

新品市場と中古市場は無関係ではなく、全体で1つのゲーム市場という生態系であると言えます。ゲームのプレイ時間を引き伸ばして中古対策をするというのは、こういった新品と中古の連動による回転をできるだけ遅くするという行為です。これがやり込み要素の危険性その3です。

やり込み要素によるプレイ時間の引き伸ばしは、もしかするとメーカー自身の首をしめているかもしれません。
中古販売の図
お金がないユーザーの図
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