フォルマントシンキング音源
実は筆者はMIDI検定2級というとてもマイナーな資格を持っている。これはまさにDTMのための検定なのだが、その立場から見るに、「一般ユーザーが音声合成で歌わせることができるもの」としての元祖はおそらくMIDI音源MU100ではないだろうか。これは10年ほど前にヤマハから発売されたDTM用音源で、画期的なことにプラグインボードを取り付けることによって、音源・エフェクトの拡張が可能だった。
これに拡張音源としてリリースされたのが「フォルマントシンギング音源」と言う歌声合成音源だったのである。
これは一般ユーザーが、ボーカリストの必要もなく自宅で歌入れまで可能ということもあって割と話題になった音源だった。
クオリティーとしては、まぁ辛うじて「人が歌っているように聞こえる」と言うレベルなのだが。
サンプル楽曲として公開されたPUFFYの『これが私の生きる道』は、機械が人間っぽく歌っていると言う衝撃と、ちょっと気持ちが悪い音声合成の出来栄えが程よくマッチした逸品だった。
しかしながら、同じくサンプル楽曲である『北酒場』はかなり人間くさかったのを覚えている。
音声合成は声に表情が付けづらく、平坦な音だと不自然さが目立つのだが、演歌独特のビブラートをたっぷりかけた音だと不自然さが軽減されるようだ。
同じ印象を受けた人がいるのかどうか分からないが、それからおよそ5年後に発売されたPS2用ソフト『くまうた』は、なんと熊が音声合成で演歌を歌うという「企画の段階で誰も止めなかったのか」という作品だった。