ターゲット層を見誤った「PS3」
ソニー・コンピュータエンタテインメント、任天堂のどちらもが現状のゲーム業界に何らかの危機感を感じ、より広い層を取り込もうとした上での次世代機戦略だったことは明らかだ。しかし、これ以上ないほどの手腕で大成功を収めたWiiを前に、PS3はターゲット層を見誤ってしまった。その結果、PS2ユーザーの多くがWiiに流れたことは事実だろう。
新しいエンターテインメントマシンだから高価である、PS3はたとえるなら高級レストランだと久夛良木前社長は語った。しかしこれを撤回し、性能が凄くても結局はゲーム機だというのであれば、価格の高さとソフトウェアの選択肢は常について回る問題である。
今、そしてこれからの「PS3」に必要なもの
タイトルにPS3は逆転できない、とつけたが、もともとユーザー層の異なる二つのマシンにとって本来勝ち負けはあまり関係がないと筆者は思っている。半年ほど前、とある新聞からの取材を受けた際、筆者はPS3の将来を聞かれて「みんながみんな、コントローラーを振り回して遊びたいわけではないのだから」決して暗い未来ではないだろう、と答えた。
廉価版PS3の発売、従来モデルの値下げなどを契機にPS3の販売台数も伸び始め、『ウィニングイレブン』『真三國無双5』などのタイトルはマルチプラットフォーム展開ながらもPS3版が健闘している。
ここからのPS3は、これまでPSを支持してきた層をどれだけ巻き込むかに掛かっていると言えよう。これまでゲームをしなかったような層や、Wiiが新たに取り込んだ層よりも、比較的ゲームに時間を費やす層に訴求したいところである。まさにゲーム離れを起こしている人々にこそ、もう一度しっかりと注目する必要があると筆者は考える。
リテラシーの高い人ほどPS3に見切りを付けている傾向が高いように思うが、ごく一般的なユーザーで「欲しいタイトルが発売されればPS3の購入も検討したい」というユーザーは多い。
ユーザー離れを起こしたゲーム業界で、「じゃあ他のユーザーを」と家族、女性ユーザーの取り込みに成功したWiiやDSもやがては「普段ゲームをやらないユーザーに関心を向けさせ続ける」ということに限界が来るかもしれない。
これは究極に楽観的な考えかもしれないが、いったんはそっぽを向いたユーザーにより映像的、音楽的に高度なものを提供しようというPS3のほうが将来的には優れた収益モデルを確立できるかもしれないのである。それにはPS3の早期の巻き返しが必要不可欠であるわけだが。