女子シングルス──梅村礼は「候補のひとり」に
21世紀最初の全日本とともに、女子の「勢力地図」が大きく塗り替わった。長く女王として君臨していた小山ちれ(池田銀行)が負け、梅村礼(日本生命)が初優勝を飾り、中学1年だった福原愛(ミキハウスJSC青森)がジュニアを初制覇した平成13年度の大会だ。それからというもの、女子シングルスの軸は梅村となり、彼女の下の世代が「打倒・梅村」をひとつの目標に続々と頭角をあらわしてきた。いわば「梅村VSその他の選手」という構図の誕生である。前回大会では優勝こそ平野早矢香(ミキハウス)に奪われたが、展開とすれば梅村を中心に進んでいた。しかし今回、軸となるべき梅村の故障により、その構図に変化が訪れそうな気配がある。
梅村は右肩肉離れの治療に専念するため、昨年12月にあったプロツアーの年間王者を決めるグランドファイナルを欠場した。以前から腰痛を抱えていたが、それをかばうためか、最近では上半身にも痛みが広がっているのかもしれない。原因はともかく、コンディションが万全であれば実力的には一歩抜きん出ているが、今回はやや割り引いて、「横一線の優勝候補のひとり」と考えたい。
横一線の中での最有力候補・藤沼亜衣 |
最有力候補にあげたい藤沼亜衣
梅村と並ぶ優勝候補の中から、あえて最有力候補として藤沼亜衣(ミキハウス)をあげてみたい。前回は優勝を目標に臨んだもののランク決定戦で敗れるという屈辱を味わった。それから不振に陥ったが、3月の世界選手権団体戦ドーハ大会で準決勝の中国戦に初めて起用され、シドニー五輪銀メダリストの李菊を破る大金星をあげた。その試合では、事前合宿で練習したガッツポーズが出た(関連記事)。それが何かを変えたのだろうか、課題だったメンタル面の弱さが影を潜め、強気のプレーが目立つようになった。アテネ五輪では世界ランク11位のリュウ・ジャ(オーストリア)を破った。10月の全日本社会人では決勝で梅村を破って優勝した。いま「心技体」が最も充実している選手のひとりと言っていい。
ちなみに、世界選手権上海大会、アジア選手権大会の女子代表選考基準では、2月に発表される世界ランクで上位2位までの選手が選ばれる。残り試合からして梅村、福原の優位は動かず、3番手の藤沼が逆転するのは難しい。同じアテネ五輪組として、初優勝で代表切符を獲得したいところだろう。
差のない平野早矢香、福原愛
藤沼とほぼ互角の有力候補としてあげられるのは、平野早矢香(ミキハウス)と福原愛の10代の二人だろう。前回18歳でチャンピオンになった平野は、その後、2月のジャパントップ12も制し、3月の世界団体では銅メダル獲得に貢献した。ただ、昨年後半の成績はやや失速気味で、9月のジャパンオープンを見たかぎりでは、持ち味の「がまん」がやや不足している印象を受けた。前回大会で見せた粘り強さと集中力、さらに「勝つんだ!」という初心を取り戻せるかどうかが連覇のカギとなるだろう。
一昨年の世界選手権パリ大会でベスト8入りした福原は、昨年も世界団体で銅メダル獲得、アテネ五輪に出場、世界ランクで日本人2位と、経験と実績をさらに積み上げている。高校生になったこともあり、試合ぶりに落ち着きが感じられるようになった。前回まではジュニアとの掛け持ちだったためスケジュールが厳しかったが、今回は一般の部に専念するのも好材料だろう。昭和63年度大会で、同じ仙台出身の佐藤利香が打ち立てた最年少優勝記録(高校2年生)の更新は十分に可能だ。
候補乱立、横一線
このほか優勝争いに絡んできそうなのは、前回2位になってからの成長が著しい藤井寛子(淑徳大)、偉関晴光のコーチを受けてから安定した成績を残している小西杏(ミキハウス)あたりか。全日本社会人で小山ちれを破った樋浦玲子(ミキハウス)、帰化して初出場となる金沢咲希(満麗、日本生命)がどこまで進出するかにも注目。ダークホースとして、世界大学選手権で優勝した福岡春菜(日本大)をあげておきたい。優勝争いはともかく、いまの日本女子は「活きがいい」とでも言おうか、福原に象徴されるような素質に恵まれた若い選手がごろごろしている。そこに梅村のような、世界トップレベルの実力者が立ちはだかる。だから、見ごたえのある試合が多く、何より楽しい。
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