「偶然の一致」
9月にあった日本卓球協会の理事会で、満場一致で北京五輪までの続投要請を受けた卓球女子監督の西村卓二氏(東京富士大監督)が回答を保留していた期間に、実に興味深い「偶然の一致」があった。女子バレーボールをアテネ五輪に導いた柳本晶一監督も、日本バレーボール協会からの続投要請を保留していたのである。
11月28日の朝日新聞は、柳本監督が語った保留の理由を《代表チーム、絶対的な支援機関必要》という見出しとともに伝えている。
お読みになった方も多いと思うので詳細は省くが、バレーボールの支援体制は柔道や水泳に比べて不十分で、企業チームのエゴなどをはねつける組織が必要、という内容だった。
その後、柳本監督は続投することになり、西村氏との結論は異なったが、記事の中の「バレーボール」を「卓球」に、「柳本」を「西村」に変えれば、そっくりそのまま通用してしまいそうでおかしかった。
選手を指導する西村卓二氏(東京富士大の練習場で) |
続投要請辞退の経緯
西村氏が辞任を決意したのは、11月21日のことだったという。ドイツ、オーストリアでのITTFプロツアー大会から帰国したその日の夜11時、木村興治強化本部長に「女子ナショナルチーム監督要請を辞退いたします」と書いたファックスを送った。
ほどなく木村本部長から電話があり、翌日会うことになった。
木村本部長と面談した西村氏は、辞任する意思に変わりはないことを伝えた。
二人が面談した翌日の23日、日本卓球協会の常務理事会があった。副会長や6人の常務理事をはじめ15人が出席した。
西村氏が続投すると思っていたのであろう、出席者たちの多くは、木村本部長から提案された、十数名が名を連ねる「監督候補者リスト」を見て、しばらく声が出なかったという。
後日ということになるのか、当日電話などでやり取りしたのか定かではないが、その会議に欠席した副会長から「後任の監督を選ぶにあたって、候補者全員の経歴を知りたい」という要望が出た。
ということは、候補者の経歴があいまいなまま後任監督の選考が進められたということになる。
僕には、この後任監督選びの出来事に、西村氏が監督を辞任した理由が象徴されていると思える。