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捲土重来(けんどちょうらい)へ 卓球日本女子、銅への階段(2)(2ページ目)

世界卓球選手権の初戦でライバルのイタリアに負け、苦しいスタートとなった日本女子。そこからいかに立ち直るきっかけをつかんだのか。連載ドキュメントの2回目は、西村卓二監督の視点を中心に描く。

執筆者:壁谷 卓

■指導者の能力

西村は、富士短期大学(現・東京富士大学)で30年以上の指導経験をもち、そのあいだ日本代表に17人もの選手を送り込んできた。
高木は、元世界選手権日本代表の下長智子を育てているし、慶誠高校は、竹内の北越高校とともにインターハイの常連校である。
選手としての能力と指導者としての能力は一致するとはかぎらない。
すこぶる腕の立つ技術職が、社長としても有能だとはかぎらないのと一緒である。

だが、それでも西村は、「ナショナルチームの監督には、世界チャンピオンになった人とか、選手としても世界で実績を残した人がなるのが理想的だと思うんです」ときっぱりという。
それは、世界戦という舞台で訪れるギリギリの局面での気持ちの持ち方などは、自分が世界を経験していないと、真の意味でアドバイスはできないからだという。


■経験不足を補うために

それを補うため、ナショナルチームの合宿には数々の「世界経験者」を招いてきた。
一昨年秋に書いたインタビュー記事「西村卓二NT女子監督の『独白』」の中で、こう語っている。

《「温故知新」をテーマにした合宿では、松崎キミ代さん(元世界チャンピオン)を招いて体験談などを話してもらいました。昔のことを現在の選手にそのまま当てはめるのは難しいけど、古いことを知ることで新たな発見があるかもしれない、と。ほかにも、野平(孝雄)さん(元NT総監督)や、高島(規郎)君(元NT男子監督)にも来てもらったりしました》

今回の世界選手権前におこなった合宿では、97年世界選手権ダブルス銅メダリストの渋谷浩から、大会に臨むにあたっての注意点を聞いている。

卓球だけではない。ほかの競技も貪欲に参考にするのが西村の特質だ。
昨年6月の合宿では、全日本柔道連盟の吉村和郎ヘッドコーチの講演会を設けた。
昨年12月には選手とともにバスケットボールを観戦したほか、相撲、剣道なども参考にしてきた。
ケタ違いの集中力を求められる射撃の選手たちは、ミネラルが豊富で即効性のある「玄米」の食事を取り入れていると知り、事前の合宿や今回の世界選手権でも試した。

これら、選手に最高のものを与えようと試みてきたことが、実際にどれだけ効果を発揮したのかは誰にもわからない。
それらは選手に吸収される中で、さまざまな価値観と溶け合い、別のものとして体内に沈殿していく。
「これをやったから勝てた!」と断定できるものは、厳密にいえば、何ひとつ存在しない。
それゆえ、大事になるのは「結果」である。
人は、結果がともなうことで初めて、やってきたことへの「自信」がもてるからだ。
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