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捲土重来(けんどちょうらい)へ 卓球日本女子、銅への階段(2)

世界卓球選手権の初戦でライバルのイタリアに負け、苦しいスタートとなった日本女子。そこからいかに立ち直るきっかけをつかんだのか。連載ドキュメントの2回目は、西村卓二監督の視点を中心に描く。

執筆者:壁谷 卓

■役割分担

イタリア戦後のミーティングで、監督の西村卓二はもう一度それぞれの役割を明確にしたという。

──戦術コーチの高木には、俺はひとことも口をはさまないから、フォアを攻めれば勝てるのにバックを突くということがないように、最高の戦術をアドバイスしてくれ。
トレーニングコーチの竹内には、選手の肩が十分にあがらないとか足がつったということがないように、選手を最高のコンディションでコートに送り出してくれ。
選手たちには、高木と竹内は世界で最高のコーチなんだから、2人の言うことを信用して、試合で最高のパフォーマンスを見せてほしい。
その結果、負けてもいい、と。
結果の責任をとるのが監督の役割なんだから、と。
だからビビらないで、自分の力を出し切ってほしい──。

日本女子のコーチは、個人戦の場合にどの選手のベンチに入るかという「選手別」の担当とは別に、「分野別」の担当も決めている。
「戦術分析」は高木誠也(熊本・慶誠高校)が担当し、日本選手はもちろん外国選手の技術や戦い方を分析し、戦術を練ってきた。
「トレーニング」は竹内聡(新潟・北越高校)が担当し、個々の選手に応じたトレーニングメニューを作成したり、コンディション調整などをおこなってきた。
さらに特徴的なのは、「技術アドバイザー」という肩書で、日本生命監督の村上恭和のほか、協和発酵監督で日本男子コーチの佐藤真二にスタッフに加わってもらっていることだ。
監督以外は全員「コーチ」という「一律の肩書」にしている日本男子とは対照的である(写真は03年3月富山合宿でのミーティング)。


■スペシャリストへの志

「20数年前かな、荻村(伊智朗)さんがね、『日本は組織力で負けた』ということを朝日新聞に書いたんです。当時は、戦術分析から体操の指導から遠征の切符の手配まで、荻村さんがひとりでやっている状況があって、それでは勝てないということが書いてあったんですね。それが頭にありましたから、僕はコーチの役割を分担したんです。やっぱり戦術もトレーニングもとなると一つひとつが手薄になって、最高のものが与えられないでしょう」

選手にできるかぎり上質のものを与えていくため、コーチの役割を分担し、一人ひとりの専門性を高めてきた。
いわばコーチングスタッフとして「スペシャリスト」の集団をつくろうと志してきたといえる。
その方針の裏には、西村のひとつのコンプレックスがある。
選手としての実績である。

「僕は全日本選手権でランキング(ベスト16)にも入ったことのない選手でした。高木も竹内も、選手としては優れた実績を残したわけではありません。ただ、そんな我々でも、長年指導というものにたずさわる中で経験してきたことを持ち寄れば、そこそこのことができるんじゃないかと」
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