ご存知の方もいるだろうが、「管理栄養士」「健康運動指導士」の資格をもっている木村先生は、日本卓球協会の専門委員会のひとつ、スポーツ医・科学委員会の委員として、2000年からナショナルチームの選手に対して栄養指導を行なっている。たとえば合宿では、「牛丼屋さんに入って牛丼の並を頼みました。ほかにどんなメニューを組み合わせると理想的な食事になると思いますか?」と選手に課題を与える。そして自身で描いた「メニューカード」(=写真)の中からサイドメニューを選んでもらう、というようなトレーニングをしているのだそうだ。
ちなみに木村先生は、中学生から始めたバスケットボールを現在も続けているという。高校時代には1、3年とインターハイに出場したほどの選手だが、身長が157センチ足らずと、バスケットボールの選手としては小柄だったこともあり、なかなかレギュラーポジションを獲得できなかった。そのため3年生になると、いっそう激しく自分を追い込んだ。それが裏目に出た。
「練習で疲れすぎて、食べられなかったんですよね。どんどん体重が落ちちゃって。そうしたら、高校最後の大会は試合に出してもらえなかったんですよ。もう、悔しくて、悔しくて。ちゃんと食べとけば出られたかもしれないっていう執念みたいなのがあって、絶対スポーツ栄養士になろうと、高校生のときに決めたんですよ。いまは、こんなに大変ならやめときゃよかったと思うこともありますけど。ハハハ」
さて、本題に戻ろう。木村先生は、夏に限らず、食事の基本として「6つのお皿」を意識することを挙げた。
主 食……ごはん、パン、メン類
汁もの……味噌汁、スープなど
主 菜……肉類、魚貝類、卵、納豆、豆腐
副 菜……野菜、きのこ類、海草類など
果 物……みかん、りんご、いちご、バナナなど
乳製品……牛乳、ヨーグルト、チーズなど
これら6つのお皿が食卓に並んでいれば、基本的にはOKだという。この基本的な食品を摂取したうえで、夏場の食事のポイントは「水分補給」「ビタミン類の摂取」「食欲減退の防止」の3点になるという。
「中高年の人が夏にスポーツをするのであれば、一番大事だと思うのは水分摂取です。のどが渇いて水を飲むというのは、すでに脱水症状が進行している状態なんです。特に夏場は、入るより出ていく水分量のほうが多くなってしまうので、のどが渇いたと思う前に、定期的に水分摂取を行なうことが必要です。栄養的には、ビタミン類、特にビタミンB系を補うことですね。なぜ疲れが出るかというと、エネルギーを作り出す過程でビタミン類が使われて不足しちゃうからなんです」
スポーツ選手の食事の基礎知識については、木村先生の「スポーツ栄養道」というサイトを参考にしてほしい。
基本を踏まえたところで、栄養学的にはいささか「不純」な質問をぶつけてみた。私のような一般の愛好者は、練習後に飲み会をすることが多く、中にはビールを美味しく飲むために練習する人もいる。しかし、できれば身体に負担はかけたくない。卓球とアルコール摂取はうまく両立する際のポイントはあるのだろうか。また、女性に多いダイエット願望を満たすには、卓球と栄養をどう組み合わせていけばいいのだろうか。
木村先生はニッコリと笑いながら、「いやいや、それは大事な問題ですよ」と言って、アルコールを摂取する際の注意点、ダイエットのコツを伝授してくれた。それを紹介しよう。