日本卓球協会は3月7日、第47回世界選手権個人戦(5月19日~25日、パリ)にエントリーする日本代表メンバー13名を発表した。
驚いたのは、男子のメンバーに変更があったことだ。宮崎義仁監督が「入れ替えはしない」と断言していたにもかかわらず、代表選手が記されたその資料には、遊澤亮(東京アート)の名前が見当たらず、代わりに岸川聖也(仙台育英学園秀光中=写真)の名前が記されていたのだ。
遊澤と岸川を入れ替えた理由、というよりも、メンバーを変更した理由について宮崎監督に聞いてみたところ、アジア選手権の直前にあった西日本選手権での木方慎之介(協和発酵)の活躍が引き金になったという(Butterflyのレポート記事)。
「決勝まで進んで、韓国の柳承敏(世界ランキング15位)からマッチポイントを奪ったんです。負けたけれども、非常に調子がいい。世界選手権で使っても面白い、と。しかし、メンバーは変えたくないから、基本的には変えるつもりもなかったんです。ただ、アジア選手権のシングルスであまりにも不甲斐ない試合をする者がいれば、好調の木方を起用したほうが可能性がある。万が一にもそういうことがあった場合には入れ替えると、大会前、選手に話したんです」
その「万が一」が起こった。アジア選手権のシングルス2回戦で、遊澤が世界ランキング500位台のイランの選手に負けたのである。そのとき遊澤は109位。失礼だが、10万馬券並みの波乱である。宮崎監督は「団体戦のショックを引きずったとしか思えない」と言う。
「準々決勝の香港戦で、遊澤は2点落としたんです。松下は2点取った。けど、チームは負けてしまった。その責任を感じたんでしょうね。その精神状態のままシングルスに入ってしまった。これが初出場の選手なら仕方ないけれども、彼は世界選手権に5回、オリンピックに1回出ている選手ですからね。それほどの選手を世界選手権までの2ヵ月で修復するのは難しいと判断しました」
遊澤はあまりダブルスが得意なほうではない。シングルスにエントリーしないのであれば、「義理的」に代表に残しておくのは、本人にとっても、日本にとってもタメにならない。宮崎監督がそのような趣旨を伝えたところ、本人も「仕方ないですね」と答えたという。
ダブルスを考えたとき、木方と組んで全日本チャンピオンになった倉嶋洋介(協和発酵)を選ぶか、坂本竜介(青森山田高)のパートナーの岸川聖也にするかの選択になった。1月のクロアチアオープンで倉嶋/木方組は予選敗退だったが、坂本/岸川組はヨーロッパチャンピオンのボル/フェイヤー・コナート組(ドイツ)に勝ち、ベスト16に入った。
「国際競争力を考えたとき、坂本、岸川のほうが上だろう、と。だから、あくまで国際的な実績を考えての選出であって、将来的なことを考えて若手を起用したということではありません」と宮崎監督は言う。
ちなみに、今回のメンバー変更により、木方がシングルスに出場し、岸川はダブルスのみの出場となる予定だ。