女子シングルス(1)
初優勝した前回のような圧倒的な強さはなかった。苦しい展開の連続だった。ストレート勝ちはひとつもなし。それでも梅村礼(日本生命)は勝った。そこに前回以上の「たくましさ」がある。
「いままでベンチにも入れなかった団体戦にエース起用していただいたりということで、日の丸を背負ってるっていう自覚が前以上に出たかなとは思います」
前回の優勝による変化をそう語るように、この1年、梅村は日本のエースとしてフル回転してきた。年明けのジャパントップ12で優勝したのを皮切りに、夏のブラジルオープンでは2連覇、秋の釜山アジア競技大会では団体銅メダルの立役者となった。全日本直前にはスウェーデンに行き、プロツアーの年間チャンピオンを決めるグランドファイナルに出場した。
それらに加えて、チームの大黒柱とならなければならない日本リーグなどの国内大会もある。相次ぐ試合とのしかかる重責は疲労を生み、疲労は腰痛を招いた。
「かなり奥のほうまできている」という激痛から反射的に身体をかばうため、「いまひとつ踏み込めなかった部分とか、そういうところからきてると思うんです。集中力もつづかなかったですね。(気持ち的に)切れそうになるっていうか、自分の中でちぐはぐしている部分が多かった」。
試合後はすぐにマッサージを受け、人のいないところで身体を休めていたが、ほとんど気休めに等しかった。世界で勝つための過密日程は、全日本に向けた調整の時間を彼女から奪い去った。
だからこそ、だろう。「負けたら、マスコミに書かれそうな原因はいっぱいあった。そうならないようにしようと思いました」。この1年で蓄えた地力と、エースのプライドだけでもぎとった2連覇だった。
「世界選手権の前に、もう一回身体をつくり直して挑戦したい。まず腰痛をしっかり治すということ。とりあえず休ませてください」
いま、彼女の腰には、再び痛みが戻っているに違いない。そう、ゆっくり休もう。
決勝 梅村 4(5、-10、3、9、-11、-4、5)3 藤沼