「でも、実際には3日目が勝負だと思ってました」と新井が振り返るように、3日目の彼の組み合わせは厳しいものだった。1試合目の鬼頭明(健勝苑)のほかは、木方慎之介、徳村智彦、真田浩二、そして田崎俊雄の「協和発酵包囲網」が待ち受けていたのだ。
3日目、午前の2試合を終えた段階でも新井の全勝は変わらなかったが、2位には、連敗を喫した大森に代わり、2敗の田崎が浮上した。田崎とすれば2敗を死守しながら徳村、真田の「援護射撃」を待ち、かりに援護がなくとも、新井との直接対決に勝って「1差」とし、最終日を迎えたいところだった。
ところが、直接対決を迎える前の4試合目にクライマックスが訪れた。
4試合目、三田村宗明(青森大)と対戦した田崎は、2-0のリードからフルセットに持ち込まれた。合計5度のマッチポイントを奪ったものの、ことごとく三田村にしのがれ、15-17で逆転負け。痛恨の3敗目を喫した。
実は3セット目の途中、三田村は足をひねり、試合後にはマッサーの手当てを受けるほどだったのだが、文字通り身体をはった粘り強いプレーで、結果的に田崎に引導を渡す格好になった。
一方、新井と真田の試合も、フルセットの勝負になった。最終セット、10-3とマッチポイントを奪った新井は、そこから真田の怒涛の追い上げによって10-8まで詰め寄られたが、最後はネットインのラッキーポイントで逃げ切った。
直後の最終戦には勢いの差が出た。新井がストレートで田崎を破った。大森が3敗で踏みとどまっていたが、前日の直接対決で新井が勝っているため、最終日の3試合に全敗しても、新井の1位が確定することが決まった。初めてのアジア選手権、そして世界選手権の代表切符だった。