主要な登場人物は5人。湘南にある片瀬高校卓球部の星野裕(ペコ)と月本誠(スマイル)は幼なじみで、ともに卓球の才能を秘めています。彼ら2人の幼なじみで、全国屈指の名門、海王学園高校に入った佐久間学(アクマ)。その海王学園のエースで、インターハイ覇者の風間竜一(ドラゴン)。古豪復活を目指す辻堂学院高校に招かれた中国からの留学生の孔文革(チャイナ)。
映画に不慣れなため、この『ピンポン』における原作の「改変具合」がどの程度のものなのかわからないのですが、大筋では原作に忠実に物語がつくられているように思えます。
それぞれに「傷」を抱えた彼らが、ある夏のインターハイ予選から、また次の夏のインターハイ予選までの1年を通して、ある者は壁にぶち当たり、またある者は目標を成し遂げていく、という中心線を持った青春群像物語だといえます。
《時代の寵児たちが起こす化学反応》
試写室で配られた資料にあるコピーは、この映画の推進力となるものをうまく言い当てているように思えます。登場人物が「化学反応」を起こすことによって、物語が前に進んでいくところがあるからです。
その化学反応を引き起こす素(もと)となるのが、「才能」です。たとえば、それがもっとも端的に表れているのが、月本と佐久間が言葉を投げつけ合うシーンであるように思われます。
インターハイが終わったある日、海王学園1年の佐久間は、「勝手な対外試合は厳禁、負けたら即退部」という海王の掟を承知で片瀬高校に乗り込み、月本に試合を申し込みます。1年先輩の風間に憧れて海王に入学した佐久間は「練習の虫」と化して、名門校のレギュラーの座を射止めたのですが、それでも風間に目をかけてもらえないばかりか、風間が月本を海王に引き抜きたい意向を持っていることに嫉妬します。
──月本を倒せば、風間さんは自分のほうを向いてくれるかもしれない。
映画ではそこまでは言い切っていませんが、月本と対戦した佐久間の心情を推し量ればそういうことになるでしょう。しかし、佐久間は、片瀬高校顧問の小泉の英才教育によって才能を開花させつつあった月本に、一方的に格の違いを見せつけられます。そのシーンは、原作では次のように描かれています。