最後には絶対に勝てるという自信。それは陶海東コーチから叩き込まれたものだという。
シドニー・オリンピックの2カ月前、小西は小・中学時代に5年近く指導を受けた陶海東に、再びコーチになってほしいと願い出た。
「高校に入ってはいって離ればなれになって、そのあといろいろなコーチについたんですけど、精神面で頼れるのは小さいときから教わったコーチのほうがいいんじゃないか、と」
爆発力を秘めた可能性と、意外なほどの脆さ。振幅の大きさでもって常に語られる小西の卓球は、強気な発言の裏返しでもある繊細な精神面に左右されることが多かった。
「まず、自信を持つこと。人間には何よりも自信が必要だ、自信がなくなったら終わりだって言われつづけて」
陶コーチの口をついて出てくる言葉も一貫して精神面に関することだった。たとえば、こんなエピソードがある。
「オリンピックの前はよかったんですが、オリンピックが終わって、40ミリボールにルール改正になって、もう、どん底の底まで落ちて。40ミリボールと11点制は、自分にとっては最悪なんですよ。卓球をやめるって陶さんにも、親にも言って、3週間、4週間ぐらい卓球しなかったんですね」
陶コーチには放っておかれたという。
「自分に考える時間を与えてくれる。ゴチャゴチャしてるときにゴチャゴチャ言われると、よけいゴチャゴチャになるじゃないですか。自分の気持ちの整理がついて、答えが出たことを言うと、いろんなアドバイスをしてくれるんです。だから、いまの自分があるのは彼女のおかげです」