卓球/卓球関連情報

2001全日本選手権 男子シングルス カット受難時代の価値ある優勝(3ページ目)

全日本選手権の男子シングルスで6年ぶり3回目の優勝を飾った松下浩二。40ミリボールになって一段とカットマンの受難が囁かれる時代において、価値ある優勝だった。

執筆者:壁谷 卓

「あの2本で切れちゃったんですよね。頭の中が真っ白になって、そのあと何も覚えていないんです。浩二さんのオーラっていうか、なんかそういうのを感じて。ハッと気がついてスコアを見たら7-9になってて。あれ、逆転されてる、と。5セット目から戦術を変えて、ドライブをストレートに集める作戦がうまくいってたんですが、試合終にベンチに戻ったら、監督に『全部クロスだったぞ』と言われて。空白の時間でした」

エッジとネットを境に形勢は逆転した。倉嶋にはもはや抗う術は残されていなかった。果敢な反撃を試みた松下が一気に9点を連取し、11-7で勝利をもぎとった。そして、大会の掉尾を飾る男子シングルス決勝は、偉関晴光とのリターンマッチとなった。

両者1セットずつを奪い合った第3セット、松下は中盤から怒涛の連続ポイントで9-3と大きくリードした。ところが、松下は9-4からの3球目をぞんざいに見えるような攻撃でミスをした。百戦錬磨の偉関が松下の心のスキを見て取ったのかどうかは知らないが、厳しいミドル攻めなどで、9-7と追い上げた。松下はタイムアウトを取って流れを断ち切ろうとしたものの、偉関のたたみかけるような攻撃にミスがなく、9-11で落とした。
「落としたけど、精神的には動じていなかった。勝ったから言うわけじゃないんですけど(笑)、しょうがないな、自分も逆転して勝つこともあるし、と。次のセットに向けて気持ちは切り換えられましたね」

第4セット、松下はその言葉通りの試合運びを見せる。このセットも偉関のドライブ攻撃が冴え、丁寧なコース取りと巧みな緩急を織り込み、中盤から松下を引き離し、10-8と偉関がセットポイントを迎えた。「このセットを落としていたら、負けていただろう」と言う松下は攻撃で勝負に出た。カットからの反撃で9-10、サービスから攻撃選手並みの連続ドライブでジュースに持ち込むと、偉関のドライブミスを誘って11-10とセットポイントを握り、最後はまたもやカットからの反撃を決めた。第3セットのロスを帳消しにする逆転劇を演じ、2-2のタイに持ち込んだ。
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