問題は今後の日本の強化策だった。ジュニアの男子は、昨年コーチ契約を結んだマリオ・アミズッチが指導していた。長年ブンデスリーガのデュッセルドルフのコーチをつとめ、サムソノフを育て上げた辣腕指導者である。しかし、それ以外の強化のビジョンは、まったく見えてはこない。強化体制の確立は緊急の課題といえた。
「今大会が終わった翌日には新体制の発表があってもいいと思うんですが」
「まだ決まらないんじゃないですか。しばらくは決まらないまま、ずるずるいくんじゃないですか」
「空白の期間はなるべく短くしないといけないと思うんですよね」
「おっしゃるとおり。こういう惨敗をしたあとですから、終わった次の日には、こういう体制でやると記者発表するのが競技スポーツの常識ですよね」
「少なくとも、水面下での交渉は終わっていないといけないですよね」
「そうです。それをね、先手を打ってできる人がいないもんですから」
「男子が13位という時点で、強化本部長は辞任するのが筋だと思うんです。それがメダル2つということによって、うやむやにされるんじゃないかという危機感があるんですけど」
「たぶんそうなるんじゃないですか。それはね、やっぱりアマチュアだからなんですよ。責任の所在がはっきりしないですよね。ソーレン・アレーンは辞めるときに、『僕らが責任とるより、まず強化本部長が責任とるべきだ』ということを言ってるんです。だから、いまの日本の社会とおなじで、リーダーシップとれない、責任とれない。すべてにやっぱり言えることでして」
「やっぱり世の中というのが全部でちゃうんですね」
「全部そうですね。学校の教育の仕方だって、おとなしくて勉強できて、いらんことしないというのが『いい子』だと。エネルギーあまってる子で、学校のガラスをばーんと割ってしまうような子は『悪い子』だと。ガラスなんか入れ替えたら、さらになる話やないですか。それぐらいのエネルギーのある子をうまく育てていこうというのじゃなくて、常に欠点指摘して、おとなしくしていろというやり方ですから。そういう世の中の風潮というのが、すべてに出てきますね。
たとえば日本卓球協会は、40ミリ対策のビデオをつくって、全国の指導者にインフォメーションしていくという仕事はあると思うんですが、それをやらないんです。だから、みんな手探りでやってて、どうやっていいかわからないというようなことで、最近、僕のところに、「40ミリの指導はどうしたらいいんでしょうか」という問い合わせがすごく多いんですよ。いま、僕は40ミリのビデオをつくってるんですけど、ほんとうなら、日本卓球協会が率先してやらないといけない仕事なんですよね」