私はショックだった。高島氏が断られたことが、ではない。ナショナルチームの男子のスタッフが、自分たちで責任を持つという意志を表明したことは当然のことであるからだ。高島氏になんらの要請をするわけでも、突っぱねるわけでもなく、武田、川越の指導を黙認している女子のスタッフよりは、はるかに潔い姿勢に思えた。そのうえで13位だったのだ。
ショックだったのは、夜間には体育館が使えないということだった。夜も練習するべきだ、ということではない。よく、プロ野球の大打者が夜中に布団から這いだして素振りをしたというようなエピソードを聞くが、練習を終えたあとに、ふと、ひらめくものがあり、それを30分でもいいから試してみたいという「うずうずした」経験は、市民レベルの私にすらあったことだから、けっして珍しいことではないだろう。それに、「天啓」のような30分というのは、はかり知れないほどの時間に匹敵するようにも思える。
使うかどうかわからない体育館を自由に使用できるように準備しておくのは、「無駄」かもしれない。しかし、万が一に備える防災訓練のように、無駄になってもいいではないか、と私には思えた。卓球界のメインイベントを目前にした日本代表の合宿なのだ。ましてや今大会は開催国でもあるのだ。日本卓球協会は選手団のために、一見無駄な、しかし意味のある準備をするべきではなかったのか。その思いは、今日の孔令輝の練習を見たことで、より強固になっていた。
私は言った。
「今日、孔令輝がサムソノフとの試合のまえに、直前までものすごい練習をしていたんですよ。大丈夫か、疲れないか、って心配になるぐらいに。2回のチャンピオンでも、ここまで徹底してやっているんだな、っていうのがすごく印象的だったんです」