「そうですね、そのまえの6セット目の9オールですか、そのときに、そのしゃがみのサーブを出すか出さんかというのが、表情で私わかりましたんで。観覧席に愛ちゃんのコーチがたくさんおりましてですね、その人たちを見て。愛ちゃんはしゃがみのサーブを出したかった。だけど上からダメだと言ったのかどうか、ちょっと私はわかりませんけども」
「逆」
福原が口を挟んだ。
「逆?」
西飯監督が聞き返した。
「自分からやらないって」
「ああ、上からやれって言ったのか」
「払われたら、いやだから」
「まあ、そういうふうなことがありましたんで、タイムアウトをとったときに、思い切ってだしなさいと。そして、できるなら小さく出せと。そしたら、『小さく出したら、ナックルで払われるからいやだ』と言ったんです。
だけど、そういう場面では、王楠ぐらいなら払うかもわかんないけども、それより下の選手では絶対に払えないと。払われた場合でも、そのボールをしっかりと打てばいいんだから、払われたら終わりじゃなくて、ドライブかけられたら終わりじゃなくて、そのボールをしっかり粘ってるうちに、自分の得意なパターンに持っていけばいいんだからと言って。そうしたら出しましたけどね。
ただ、バックサイドから出すというのは私も知りませんでした。あれは、いやいやすごいなと、びっくりしましたね。それで、もう1本バックサイドから出すのかどうか、私も考えていたんですけど、出さなかったのが正解だと思います。出してたら、おそらくドライブで一発で仕留められて、もっと簡単に7セット目はやられてると思いましたね。それをフォアに変えて出したというのは、持って生まれた素晴らしい才能ですね」