1997年6月22日、日本卓球協会の理事会において、8年ぶりに結成されることになったナショナルチームに、元スウェーデン監督のソーレン・アレーンを招聘することが承認された。全日本チームに、はじめて外国人の監督を抜擢するという画期的な決断だった。
さらに、世界の卓球に精通した高島氏を総監督に据え、長期的かつ継続的に強化を図り、4年後の世界選手権、すなわち、いま開催されている大阪大会でのメダル獲得を目指すという、卓球ニッポン復活のための再建策が打ち出されたのである。
「はじめての外国人監督ということで、卓球協会に危機感みたいなものが多少でてきたんでしょうか」と私は聞いた。
「そうですね。卓球がどんどん進んできたにもかかわらず、新しい指導者っていうか、若手の優秀な指導者が日本には育っていないと。国内でどんどん勝たせるような指導者はいるけれども、世界の卓球は違うので、世界でも戦えるような勉強はこれからもっとさせようという思いが日本卓球協会の上層部にもあったんでしょうね。
日本も、ジュニアクラスには世界でも十分通用するぐらいの素質に恵まれた選手、たくさんいると思うんです。ですから僕は、そういう面ではぜんぜん劣等感を感じていないんですよ。絶対やれるという自信はあるんです。
でも、17、18歳ぐらいから、より世界の卓球に近づけるためには、やっぱり一番大事なのは指導者なんですよね。勉強でもそうで、問題集から何から全部あたえられて、『はい、あなた、ひとりで勉強しなさい』と言われたって、そう成績あがらないですよね。やっぱり優秀な先生に教わらないと成績あがっていかないですよね。
卓球もそれとおんなじで、自分ひとりでは自分の卓球わかりませんから。いい指導者との出会いがないと、なかなか強くなれないんですけど、そのへんが日本は非常に手薄なんです。
そういうなかで、ソーレン・アレーンを呼んでくれば、選手の強化だけではなく、若手の指導者の養成もできるんではないかという二面的な意味があったと思うんです。それで、ナショナルチームの合宿のあいだに、指導者セミナーをどんどん入れていきましたからね」