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全仏オープンから見る現代テニスの流れ(2ページ目)

テニス界でもっとも激しいといわれるイベント=全仏オープンテニスをよく見ると、現代テニスへの流れが垣間見えます。マイケル・チャンとロジャー・フェデラーにも共通点が……。

執筆者:吉川 敦文

1992年に始まるブルゲラ、モヤ、ナダルスパニッシュテニスの変化

ボールパーソンとローランギャロス
ボールパーソンの背中には、ITFのシンボルマーク。彼らは最高のテニスをもっとも近い場所で見てるといえる
モニカ・セレスの登場から少し遅れた1992年、男子優勝したのが、セルジ・ブルゲラ。スパニッシュテニス時代の到来です。セルジ・ブルゲラのテニスは、モニカ・セレスとは同列に語れるものではありませんでした。

スパニッシュテニスの代名詞はヘビースピン。回転を多く使い、相手をコートの外に追い出します。ベースラインのはるか後方から、ネットの高いところを越してヘビースピンのボールを打ちます。これもまた衝撃でした。その後、男子はベースラインから3メートル、5メートルと下がってプレーできる(ポイントが奪える)のが当たり前になりました。

その後、1998年に優勝したカルロス・モヤもスペイン人。カルロス・モヤのテニスは、セルジ・ブルゲラのテニスとは少し違い、ベースライン上でテニスをする回数が増えました。すると、クレーコートだけでなくハードコートでも勝てるようになってきたのです。

スペイン人の優勝は、2002年アルベルト・コスタ、2003年ファン・カルロス・フェレーロを経て、2005年から2007年ラファエル・ナダルと続きます。ラファエル・ナダルになると、ヘビースピンを利用したままボールを叩き込むという感じです。ボールの変化は、映像で見てもびっくりするほど分かります。トッププロ選手ですらその変化についていけず、ボールの後ろに十分追いついているのにミスをすることがあるほど。

ラファエル・ナダルのもう一つすばらしいところは、2006、2007年と芝コートであるウィンブルドンで決勝に進んだことです。芝のコートはレッドクレーとは反対にボールがよくすべり、大きくは跳ねません。レッドクレーに強い選手は、早いテンポや低い打点の処理を要求されるので本来は不利とされています。

ただ、ナダルには勝てる理由があります。芝は速いコートではありますが、変化をしやすいコートでもあります。ナダルのボールは回転量によって変化の仕方自体が大きく変わり、対処しづらいのです。低い打点や早いテンポも克服しているので、負ける要素がほぼ見つかりません。

スーパーマンとも評されるロジャー・フェデラーは、ナダルの変化あるボールをしっかりコントロールしてスライスで何度も低く集めたり、早いタイミングで仕掛けるなど多彩な攻撃で勝利していますが、ナダルはフェデラーがいなければ優勝していたことでしょう。

ちなみに1998年以降、クレーコート育ちでない選手の全仏優勝者は、1999年のアンドレ・アガシただ一人です。

ジュスティーヌ・エナン、ロジャー・フェデラートータルバランステニスの今後

ロジャー・フェデラーは、全仏での優勝こそありませんが、言わずと知れたトータルバランスのプレーヤー。どこからでもポイントを奪うことができ、ネットプレーも含めなんでもできる選手です。

女子でこの3年間優勝しているのは、ジュスティーヌ・エナン。数少ないベースラインの後ろからでもポイントの取れる選手であり、トップスピンを上手に使い、ベースラインの中でもしっかりプレー。バックは片手ですが、早いタイミングでのダウンザラインも魅力で、ショートクロスなどのショットも得意。どこからでもポイントが取れるトータルバランスを持っています。フェデラーと共通している点は、フィジカルとメンタルの強さを兼ねそろえた安定感といえるでしょう。

特にこの1年、1980年後半の選手の活躍が目立つようになってきているのですが、彼ら彼女らはエナン、フェデラーのテニスを見て育っている世代。どこからでもポイントを取れるパワー、スピン、多彩な技術を持つ選手が増えてきているのです。

1985年生まれでロジャー・フェデラーと同じスイス出身のスタニスラス・ワウリンカ(Stanislas Wawrinka)はトップ10に入ってきました。日本の錦織圭も1989年生まれ。錦織圭は技術的にも戦術的にも伸ばすべき点は多いのですが、それは誰もが通る道で今後が楽しみ。全仏が始まる頃には、その見どころや注目の選手をお伝えしたいと思います。



<関連リンク>
ローランギャロス公式ページ
2007全仏オープンテニスの特徴と見どころ
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