復活劇を演じた二人~女子シングルス~
病気とケガでツアーから遠ざかっていたジュスティーヌ・エナン=アルデンヌが、完全復活を果たした。この全仏の勝利で、2003年全仏オープンとUSオープン、2004年全豪オープンに続く、4つ目のグランドスラムタイトルとなる。今シーズン、エナンは4月のマイアミ(USA)の大会に初参戦し、準々決勝でマリア・シャラポワと対戦し、フルセットの末、敗退。しかし、その後チャールストン(USA)、ワルシャワ(ポーランド)、ベルリン(ドイツ)、フィレンチェ(イタリア)と4大会連続で優勝を果たし、万全の体調でパリに乗り込む。そして、その勢いは全仏オープンでもとどまることはなかった。
始まる前、エナン優勝の最大の難所は準々決勝のシャラポワ戦と思われたが、エナンの強力なショットに翻弄されたシャラポワは6-4、6-2のストレートで敗退。今や、その動向が全世界から注目されるシャラポワだが、全仏ではマイアミと同じ結果は得られず、予想外に早く戦いの場から降りていった。
今回、エナンは2週間を戦う間に徐々に体調を整えていったと言える。大会序盤はファイナルセットまでもつれる試合が続いたが、準々決勝以降はストレートで試合を制す。大会を通じて戦い抜くこと、試合をしながら自らの体調を管理していくことができるのも、エナンの強さかもしれない。準決勝は、ナディア・ペトロワに6-2、6-3で圧勝し、決勝へ進出。
決勝の相手は、2000年に全仏を制したメアリー・ピアース。しかし何の因果か、ピアースはその全仏の優勝後、ケガに悩まされ続けることになる。グランドスラムのタイトルを手にした翌年は全豪3回戦進出したものの、そのほかのグランドスラム3大会を欠場。2002年は全仏で準々決勝まで進出したものの、それ以降は4回戦が最高という成績しか残せていなかった。
しかし、長いケガとの戦い、苦しみながら4年ぶりに決勝の舞台へ舞い戻ってきた。大会前に、ピアースの決勝進出をだれが予想しただろうか!それほど、ピアースの存在はそのほかの選手の影に隠れていたのだ。とは言っても、エナンの前にはなすすべもなかった。エナンも同じ思いをしていたということだろうか…。
決勝のゲーム展開は、第1ゲームこそピアースが取るものの、そこからエナンが14ポイント連取し、26分という短時間で6-1とエナンが第1セット奪う。第2セットに入っても、エナンの攻撃は緩まず。第3ゲームまでエナンが立て続けにゲームを奪い、第1セット、第2ゲーム以降エナンが9ゲームを連取。第2セット、第4ゲームでようやくピアースがもう1ゲームを取るが、そこまでだった。第2セットも6-1で、エナンの優勝が決まり。圧勝と言える試合運びだった。
ピアースはうれしさと悔しさの入り混じった気持ちで、大会をこう振り返った。「身体的にも精神的にも限界でした。この2週間、全精力を注いで、そのおかげで素晴らしい大会になりました。まさか決勝まで勝ち上がれると思っていなかったので、とてもうれしいです。でも、負けてしまったのは悔しい。もう少しいい試合がしたかったです」。一方、エナンはグランドスラムのタイトルを手にしても「まだ100%の調子ではありません。もっといいプレーができると思っています」と語った。
もうまもなく、ウインブルドンが開幕する。ウインブルドンのタイトルを手に入れれば、エナンのグランドスラム制覇が実現する。復活の女王の新たな挑戦は、すでに始まっている。