完成された引退。理想的な3日間
番組終了後、バックステージから全選手&関係者が登場。フレアーの門出を祝う、本当のサプライズが用意されていた |
3月最後の月曜日。レッスルマニアを一年の最終回とするなら、物語の第1話として、ファンの注目を集める初回のRAW。その番組冒頭では、引退するフレアーがエンディングで「Farewell Address」と題し、ファンに最後の挨拶を行うことが発表された。
一昨日、昨日と同様、大歓声と拍手で迎え入れられたフレアーは、ファンに「二度とレスリングをすることはないが、悲しまないでほしい。なぜなら、自分はプロレス史上最高のキャリアを積んだんだ」とメッセージを送る。
すると、ここでテーマ曲に乗ってHHHがリングに登場。フレアーを労い、謝意を述べたHHHは、1980年代後半、全米を席巻した伝説のユニット、フォーホースメンのメンバーを呼び込み、その後も、リッキー・スティムボート、グレッグ・バレンタインといったレジェンドに、バティスタ、ジョン・シナ、クリス・ジェリコ、フレアーの家族、昨夜戦ったショーン・マイケルズに至るまで、選手&OBらの名を次々にアナウンス。皆、リングに上がっては、感激して顔をクシャクシャにしたフレアーと熱い抱擁を交わした。
ここで、USAネットワークによるRAWの全米生中継は終わった。ここからは、いわゆるボーナストラックと呼ばれる、会場に集まったファンしか知ることのない特別なパフォーマンスタイムだ。もちろん、今宵は、それすらも、フレアーのための時間であったことはいうまでもない。
なんとRAWに登場したアンダーテイカー。ホール・オブ・フェイムでさえファンの前には姿を現さなかった男が、フレアーの目前に現れた |
更に、場内にアンダーテイカーのテーマ曲が鳴り響くと、コスチューム姿のテイカーがリングイン。フレアーに“Rest in peace!”(安らかに眠れ)のパフォーマンスを披露した。そのキャラクターを守るべくホール・オブ・フェイムでさえファンの前には姿を現さなかった男が、1万人が見守る中でフレアーと抱き合い、その引退セレモニーはいよいよクライマックスを迎える。
最後に姿を現したのは、ビンス・マクマホンWWEオーナー。テーマ曲もなく、花道にずらり並んだスーパースターズを掻き分けるようにリングへ入ると、フレアーへ飛び付くように抱き付き、その手を高々と掲げた。
完成された引退。理想的な3日間だった。
35年以上にも渡って戦い続け、ファンやレスラー、関係者、誰からも愛され、日本のファンにも馴染みがあり、著しい“老い”を見せることなく、手加減なしのプロフェッショナル・レスリングで観る者全てを魅了してリングを降りたレスラーがいただろうか?
ファンやスーパースターに何度も投げキッスを送ったフレアーは、3日間、泣いてばかりいたためか、最後の最後にようやく満面の笑みをみせると、リング上に着用していたジャケットを敷き、はしゃぐようにニードロップやエルボードロップを落とた。
最後に再びマイクを持ったフレアーは言葉少なく「サンキュー」と、5回繰り返してリングを降りると、花道に並んだスーパースターに見守られ、バックステージへと帰っていった。
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