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"世界に力道山を"ネパールの英雄を知る(後)(3ページ目)

ネパールの国民的英雄、プロレスラー、ヒマラヤンタイガーは、祖国でゼロからプロレスを勃興。その裏側では内紛による影響、そして、過酷な現実との戦いが続いていた。

執筆者:川頭 広卓

“身体を鍛えることが自分に打ち克つことに繋がる”

――ネパール・プロレスの技術レベルについては、いかがでしょうか?

「WWEと全く同じレベルだ。スープレックス、アームドラッグ、ボディスラム、ロックアップ、全てやるぞ。もちろん、人によって個別な技を持っているし、アクションとパッションとスタイルの違いはあるけどな。そんなに大差はない筈だ」

――なんか、すごい話になってきましたね!?弟子への指導は、ジョニー・ロッジの弟子でもあるタイガーさんが全て教えている?

「そうだな。ジョニー・ロッジは色々なことを教えてくれたが、俺はもっと色々なことを知り、覚えてきた。いつか、俺を越える弟子だって出てくるだろう」

――ちなみに、ジョニー・ロッジの教えとはどんなものだったのでしょうか?

「ジョニー・ロッジはアメリカに居たとしても、俺が自分の弟子に間違った教えをしようものなら、怒って即刻修正にくる程、厳しいんだ。俺は彼を尊敬しているから、彼の教えを忠実に守らなければならないんだ。ちょっとしたケガをするのは、基本がなってない証拠だし、彼がそれを知れば“道場から出ていけ!”って叫ぶんだ」

――その後、ネパールでプロレスは根付いてきましたか?

「まだまだこれからさ。でもな、俺はいつもヘルメットを被っているんだ。これを取るとサインをせがまれて大変だからね」

――興行収益を学校設立の為に寄贈するなど、国への貢献度も非常に高いと伺いました。

「アメリカにいた時に、インディー団体で試合をしていたが、アメリカではソーシャルワークをするというので、学校を訪問したんだ。そこで、学んだことは、身体を鍛えることが自分に打ち克つことに繋がるということだ。これはアルコールやドラック、他人への暴力への抑止にもなる。だからこそ、ネパールに帰っても、自分のライフワークとしてこの活動は続けるべきだと感じたんだ」

――タイガーさんがアメリカから持ち込んだのは、プロレスだけではなかったのですね。

「ネパールには身体障害者も多いんだが、この国では、身体障害者の置かれている立場はとても低いものだ。でも、自分は違う。そういう人にも愛情を注ぎたい。HIVにかかって苦しんでいる人も多いが、自分だって積極的に彼らを励ましているよ。

あと、ネパールという国は、とても厳しい国なので、家族から見捨てられてしまう老人も多いんだ。そういった行き場のない人を施設を紹介している。自分の性分として、社会的弱者を見つけたら放っておけないんだ」

――なるほど。今回の来日はタイガーさんにとっても意義深いものだったようですね。日本はどういうところでしたか?

「ネパールでは何をするにも一人でやらなければならないが、日本では本当に多くの人がサポートしてくれたよ。今回、沢山のことを学んで、色んなモノが引き出された感じがする。日本のいいところをネパールに持ち帰って、それは国を挙げてやるべきだと考えているし、それは、既にネパール大使とも話したことなんだ」

※マオイスト:ネパールの共産主義政党。ネパールでは、国王派とマオイストによる内戦が何年も続いた(2006年11月に包括和平協定に調印した)

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