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ライブドア「プロレス参入」の一部始終(上)

2005年6月16日、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げていた新興ベンチャー企業の「想定外」の提携発表にマスコミは耳を傾けた。新たな胎動に飛びつかざるをえなかったのだ。

執筆者:川頭 広卓

想定外の提携発表

2005年6月16日、ライブドアがプロレス・イベントdragondoorとの提携を発表。六本木ヒルズにあるライブドア本社で行われた記者会見には30社近いマスコミが集まった
「ライブドア、プロレスに参入!」

2005年6月17日スポーツ新聞各紙に、そんな見出しが躍った。

2005年6月16日、ライブドアがプロレス・イベントdragondoorとの提携を発表。六本木ヒルズにあるライブドア本社で行われた記者会見には30社近いマスコミが集まり、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げていた新興ベンチャー企業の「想定外」の提携発表に耳を傾けた。

すべては嘘から出た実(まこと)

今もなお、dragondoorは「ライブドアのスポンサードを受け、立ち上がったプロレス団体」と説明されることが多く、あたかも既成事実のように報道されている。しかしながら、実際のdragondoorは、ライブドアから多額のスポンサードを受けている事実もなく、その名称もライブドアとの提携ありきで命名されたわけでもない。

遡ること1ヶ月半。2005年4月27日、dragondoorプロジェクトの発表会見を実施したのは、元闘龍門ジャパンの川畑憲昭氏だった。「有限会社闘龍門」を母体に、ウルティモ・ドラゴンこと浅井嘉浩が設立したメキシコのプロレスラー養成学校・闘龍門の卒業生らで構成される、新イベントdragondoorの開催を発表。ロゴマークこそライブドアのパロディではあったものの、名称そのものはライブドアというより、袂を分かったかつての所属団体、ドラゴンゲートへの対抗心やアンチデーゼという要素のほうが大きかったようだ。

これをもってメキシコ闘龍門の出身メンバーは一部の選手を除き、ドラゴンゲートとdragondoorに二分される格好となった。そんな背景を知ってか知らずか、これを見たライブドアは自分達のパロディに怒るどころか、優良コンテンツになり得ると判断。すぐさまdragondoorに提携案を持ちかけ、両者の二人三脚が始まったのだ。

在野の一流新聞 東京スポーツにスクープを提供

提携の中身は多岐に渡った。ポータルサイト下にドメインを置いたオフィシャルサイトの開設、あるいはグッズ販売や試合会場と連動したリアルタイムのモバイルコンテンツの制作、さらにサムライTV社の協力を得た試合動画の配信と、枚挙に暇がない。

しかし、いずれも期待ほどの効果は得られなかった。実績のないdragondoorにとって、提携内容がネット上でのサービスというだけではいささか物足りなく、専門誌を飛び越え、世間にインパクトを与えるまでにはいたらない。

「ライブドアの知名度を最大限に利用できないか?」

定期的に行われた打ち合せで、ライブドアの話題性にプロレス的思考をうまく結びつけ、いかにシナジーを生み出すかということが何度となく話し合われた。結果的には、ストレートに話題を振りまくため、ライブドア本社で記者会見を行い、会見前日には東京スポーツに提携をスクープさせるという手法を用いることになる。

東スポの一面トピックスに載った「堀江社長プロレス進出」の見出しも功を奏し、会見当日には多くのマスコミを集めることに成功。小さな提携は大きな報道へと形を変え、dragondoorはその知名度を一気に向上させた。

余談になるが、川畑代表との打ち合せでは、当然のことながら、堀江元社長の会見同席が何よりも宣伝効果であるという話にもなった。しかしながら、どう考えてもプロレスに興味のない堀江元社長の同席は不可能。そこで白羽の矢が立ったのが、当時露出の増え始めた乙部綾子広報である。彼女に会見の司会をしてもらうことによって、堀江効果に次ぐインパクトは残せるのではないかと考えたわけだ。さっそく打診をするやなんと二つ返事で了承。しかし、会見当日の朝になって体調不良によるキャンセルを告げられてしまう。この一報で大慌てとなった関係者一同は、代理の司会を探す羽目になるも、午前中でも早い時間での会見だったため、社員が出社しておらず、たまたま早く来ていた女性社員に司会を無理矢理お願いするという何とも情けないオチがついた。

「マスコミを集める為、乙部広報の名前を利用したのでは?」と一部ではそんな憶測も出たが、実際乙部広報が会見に参加し、その中で“brother”YASSHIに絡まれたりでもしていたら、会見でのインパクトや雑誌、紙面での取り扱いは倍以上になっていたに違いない。

徐々に表面化する確執

「想定外」で業界内外へインパクトを与えたdragondoorだが、徐々に陰りが見え始める
いずれにせよ、業界内外へインパクトを与えたdragondoor。その旗揚げ戦となった、7月19日は超満員のファンが後楽園ホールに集結。目玉の一つとなっていたメキシコCMLLのスター選手、ミスティコの欠場こそあったものの、アメリカでプロレスの修行を続けるミラノ・コレクションA.T.の来場や何故かノリノリのファンの盛り上がりもあって、大盛況のうちに幕を閉じた。

しかし、順調に見えた船出も、徐々にほころびが露呈しはじめる。

旗揚げ戦当日には、ドラゴンゲートのマグナムTOKYO、B×Bハルクらが花束を持参し来場。川畑代表が対応にあたるも、マグナムTOKYOはdragondoorがミスティコ欠場による代替選手貸し出しの打診、ならびにその交渉過程をマスコミに暴露。両者の確執はファンの目に見える形で表面化されることとなる。また、これまでドラゴンゲートからスポーツメディアとしてのライブドアに配信されてきたリリースの類も一切流されなくなる。

さらには、試合の動画配信においても、ライブドア側とサムライTV側とで提携の認識にズレがあり、結果的に7月19日の試合にも関わらず配信を開始したのが8月以降、配信内容もメインイベントのみ。ネットサービスとおいて非常に重要な要素である「スピード」「内容の充実」という点で大きな課題を残す顛末となった。

ライブドア「プロレス参入」の一部始終(下)へ続く。

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