人気選手の光と影/焦りと不安に取り憑かれる私生活
二月の大渡戦前、お得意の“メンチ合戦”パフォーマンスを披露して衆目を集めていた我龍。ラウンド終了の1分前になると、フットワークを使わず相手とひたすらド突きあう“我龍タイム”でも人気があった。 |
我龍はM-1ミドル級王者のタイトルを保持(逮捕後の27日に返上)、K-1MAXを始めキック各団体に参戦。元暴走族という“前歴”を売りに、金髪に染めたヘアスタイルに、特攻服のヤンキースタイルで入場、対戦前には相手にメンチを切る(にらみ合う)という不良パフォーマンスで人気を博した名物選手。
逮捕日の午前1時35分、我龍は乗用車内に居たところ、不審に感じたパトロール中の警官に誰何され、車内に隠し持っていた大麻(約2グラム)の所持を発見され、現行犯逮捕された。既に当人は取り調べで容疑を認めているという。
我龍は、今年2月23日に現場近くの代々木体育館で開催された「K-1 World MAX2009に出場。現役の電通営業マンとしても知られる大渡博之と対戦。“元不良とエリート会社員の対決”として話題を蒔いた。
試合前日の記者会見で我龍は、印象的な言葉を吐いている。「今、いろんな殺人事件とかがあるけど、バカでも自分の得意なものを見つければ、デカい舞台に上がれるというのをアピールしたい」と。
翌日我龍は判定勝ちを納める。一般社会で不良あがりのアウトローが、エリートサラリーマンより上に立つという光景は滅多に見られるものではない。だがK-1という舞台を得て、我龍は見事に有言実行を果たしたことになる。本来なら多くの“おちこぼれ”に勇気を与えたはずの、彼の“成り上がり”スピリットは、いったいどこで暗転してしまったのだろうか。
実は、事件の萌芽はこの勝利の中に既に内包されていたのだ。
この試合で我龍は右足の靱帯を断裂。試合はもちろん、練習も出来ない状態に陥ったというのだ。また私生活でも、昨年三人の子供を一緒に育んだ愛妻・章子さんと離婚。かつて新日本キックをトラブルで離脱、選手として底辺を舐めた時代にも支えてくれた大事な家族を失い、精神的に不安定な状況が続いていたようだ。
おそらくこうした“不幸”の積み重ねが、今回の事件の銃鉄になったことは想像に難くない。
我龍真吾逮捕/大麻汚染はなぜつづく(2)