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荒鷲の不孝息子35年目の飛翔・坂口征夫(5)(2ページ目)

父はプロレスラー、弟は俳優。総合格闘家坂口征夫には、常に家族の威光が覆い被さる。35歳、ようやく遅すぎる開花を迎えた長男が、不良少年時代、夢の挫折、家族との確執…その壮絶な過去を語り始めた。

執筆者:井田 英登

27歳。封印された格闘技への想いが吹き出した瞬間

――まあ、そういう経緯があって、入れ墨まで入れる覚悟してプロレスから離れた人が、いったいなんで格闘技に戻ってきたんですか?

坂口「たまたま転々と仕事をしてて、一年ぐらい倉庫勤務のサラリーマンをやったんですけど、ちょうど結婚もして子供も生まれてたのに、そこがつぶれちゃったんですよ(笑)。とりあえず仕事はしなきゃいけないんで、何ができるかなってことで、また土木に戻ろうってことになって。そのときに、今も住んでる横浜に知り合いの会社があって。そこは今も勤めてるんですけど、二人ほど空手やってる人がいまして。自分、ウェイトもなんもやってなかったんですけど、『おまえいい体格してんな。空手やんない?』って誘われて」

――いますねえ。格闘技周辺には、その手の勧誘系の人って(笑)

坂口「まあ、みんなに言うみたいですけどね(笑)。恒例のってやつで、周りは『また言ってるよ。誰でもいいんだよ』みたいな目で見てて(笑)。『おまえだったら、すぐ試合に出られるよ』みたいに煽られて。まあ自分はそんな気もなかったんですけど、かといって入ったばっかりで先輩が言うのをイヤだっつうのも出せないんで。見に行くぐらいならいいだろうって『ああ、いいっすよ。見学だけだったら行きますよ』って、見学してたら…てか道場に入った時点でぶあーっと、やりたいって気持ちが出てきちゃったんですね。もう見学してられないなっていうのが、あの時の気持ちですよね。なかこう、鍵をつけて仕舞ってたものが、扉から全部吹き出した、みたいな感じで。そのまま見学じゃなくて、体験させてくださいってことで、帰りには『入ります』って胴衣買って入ってましたね。」

――一気に燃え上がっちゃったんですね(笑)

坂口「メラメラでしたね~。それまで打撃のスポーツってやったことなかったんで…こんな殴って蹴っていいんだ、って(笑)」

――うははははは、まあ、路上ではさんざんやってたとはいえね(笑)

坂口「そうなんすけどね(笑)。それで普通のカワイイ顔した人がエラい強かったりとか。イカつい人が弱かったり。それがすごく面白かったですね」

――そこで眠ってた格闘技の遺伝子がまた動き出しちゃったんですね

坂口「だから、18から27までホントに何もやってなかったのが、ばーんと出てきちゃって。そっからバンバン練習して、一応都の大会で優勝したりとか。ちょうどその頃(2000年前後)に総合が流行り始めたりして、菊田早苗の名前が世の中に出始めた頃でして。菊田さんとはやってない間も連絡はちょこちょこ取ってたんですけども。GRABAKAの練習場所がちょうど高田馬場でしたっけ?」

――新宿スポーツセンターですね。

坂口「あそこで、今名前聞いたら錚々たるメンバーで練習したりしてたじゃないですか。『今こうやってやってるんだけど、おまえもやんない?』みたいな感じで誘われたりもしてたんですけど。『俺はもう格闘技辞めたんで、先輩すみません』みたいな感じで断っちゃって。今考えると…うーん、失敗したななんて(笑)」

荒鷲の不孝息子35年目の飛翔・坂口征夫(6)に続く
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