“バカと蚊のいがみ合い”は、低迷を吹き飛ばす起爆剤となるのか

の危機感を、僕は魔裟斗の“豹変”の原因と見た。

仮に風評通り「DREAM」が視聴率低迷で放映打ち切りになったとしたら、単体での視聴率は好調である「MAX」であれ、対岸の火事とは言い難い状況になってくる。年末のビッグイベントであるDYNAMITE!も含めて、K-1ブランドの安定は TBSとFEGの好調な関係が維持されていてこそ成立するもの。

かつて、2005年の年末にも怪我で一回は出場を辞退していた「DYNAMITE」が、話題面で当時のライバル「PRIDE男祭り」の勢いに押されていると聞いて、緊急出場を決めた過去のある魔裟斗の事。

当時“K-1愛”という谷川プロデューサーの言葉ととも広く喧伝された、この“気配り/目配り”は決して今も衰えては居るまい。

要は、この俄な“舌戦”、魔裟斗の演出ではないかと僕は見ている。格闘技界全体の熱の低下が言われる昨今だけに、「DREAM」が沈めば「MAX」も安泰ではない。その危機感が魔裟斗の“ヒール志願”を産んだのだと。

冒頭にも書いた通り、「MAX」はそのリングの上のスポーティブな戦いのみでも十分観客を魅了し、酔わせる事の出来る素晴らしいスポーツコンテンツである。したがって、今回のようなプロレスまがいな舌戦は必要ではないと思う。実際当日のチケットもほぼ完売状態であると聞く。

しかし、魔裟斗の抱いた“危機感”は、そんな一大会単位の話ではないと思う。どんな命を削った戦いを繰り広げても、それを見守る観客が居なくなってしまえば、それはただの暴力であり、ただの野試合で終わってしまう。

魔裟斗は間違えなく格闘技をトップスポーツの座に押し上げた立役者の一人である。本当ならそのトップの座に君臨して、ブームの後退や人気の低下になど拘泥せず、残り少ない現役の時間、高いギャラを受け取り続けて、後は野となれ山となれで“勝ち逃げ”したところで、誰が彼を責めようとするだろうか?