【PART6】そして事態は終焉へ。やはり答えは「UFC JAPAN設立」なのか
こうして見て行くと、やはり事態は“終焉”に向かいつつあるようだ。
今回、PFCWWのジェイミー・ポラック社長が“武士道枠”の日本人選手のUFCへの移籍工作を進めていたという報道から何が読み取れるかを、最後に見て行こう。
このところ、UFCは“日本人ラッシュ”といいたくなるような、大量の日本人選手ブッキングを進めている。先日の郷野聡寛に先だって、前回のUFC73には、吉田道場から中村和裕、小見川道大の二人が出場。また、郷野と同時期にUFCとの契約を結んだという長南亮も出撃スタンバイ中だと聞く。ノゲイラやミルコ、ランペイジらのPRIDE本戦レギュラー組だけならいざしらず、こうした“武士道勢”とでもいうべきPRIDE系日本人選手の大量キープ現象は、いったい何を意味するのであろうか。
アメリカのファンの視点からみれば、正直な所、日本人選手は既に過剰供給もいいところであろう。UFCの現在の人気を支えるファン層は、明らかにThe Ultimet Fighterの煽りで本戦鑑賞にたどり着いた“俄かUFCファン”が中心であり、それ以外の総合格闘技シーンなど知った事かという感覚のはず。PRIDEの何たるかを知っていれば良い方で、実際のPPV放送など見た事も無いような層がほとんどのはずなのである。そんな客層に対して「PRIDEから来た日本人選手」と言って、大喜びを期待しても無駄だろう。
彼ら以前にも、この二年ばかりの間にUFCには岡見勇信、三島☆ド根性ノ助、弘中邦佳、中村K太郎らPRIDE系以外の選手たちが次々に参戦してはいる。しかし、戦績面を見る限り、岡見以外にこれと言った勝ち星を挙げている選手は居ないし、むしろUFCが純粋培養してきたUltimate Fighter出身の若手に後塵を拝するケースが多い。彼らが客席を沸かせた試合といえば数える程。正直な所、大半の日本人選手は、オクタゴンでは“お呼びでない”状況と言っていい。
そんな実情で、あえて日本人選手を大量起用しても、競技的にも人気的にも決してイーブンとは呼べない状況が続くだろう。なぜダナは彼らを重用し続けるのだろうか?
まず真っ先に頭に浮かぶのは、彼らが日本市場の他団体に流出することを阻止しようという狙いだ。PRIDEがUFC傘下に落ちた今、日本市場での彼らの最大のライバルはもちろんHERO’Sである。
既に桜庭和志、美濃輪育久らUWFの流れを汲む選手は次々とそのリングに上がっており、それに続く選手としては、武士道のエースだった五味隆典参戦の噂もちらつく。(ただし、五味の場合、水面下の移籍交渉は何回か行われているようだが、K-1と彼の仲介者との関係もあり、条件交渉が難航しているとの情報を漏れ聞く。また吉田秀彦も九月一杯でPRIDEに動きが無いなら他団体への移籍を考えなければならないだろうというコメントを発しているようだが、一方で彼にはスポンサー筋の意向もあるようで、即その落ち付き先がHERO’Sになるとは限らない。)
無論、UFCが誘えば総ての選手が、オクタゴンに入りたがるとは限らない。あくまで日本で闘いたいという選手も居れば、UFCのルールや金網、あるいは体重制が自分のファイトスタイルに合わないと考えている選手も居るだろう。あるいは、アメリカ特有の制度である、アスレチックコミッションの厳しいチェックに引っかかる恐れのある選手も居るし、単純に日本に於ける評価程のギャラが提示されないという理由でオクタゴンに背を向ける選手も居る。(エメリヤエンコ・ヒョードルとアレキサンダーの兄弟、あるいはジョシュ・バーネットなど、PRIDEトップクラスの選手が結局UFCを“次の就職先”に選んでいないのが、その顕著な例だと言えるだろう。彼らの理由が上記いずれにあたるか、推理して楽しんでもらうのも、またストーブリーグの一興かもしれない。)
若干話が横道にそれた感があるので、軌道を修正しよう。