その晩、僕はジョシュの泊まる東京ドームホテルを訪ねた。
彼が初来日してから一年--そして正月の永田戦でプロレスデビューを飾ってから、半年が経過していた。
聞きたい事が山ほどあった。いくつもの苦い想いを重ねながら、ようやく日本で最初のリアルファイトを行うチャンスを掴んだ彼から、いろんな本音を引き出したい。そんな気分で、僕は彼の部屋に入った。
だが、この日行ったインタビューのせいで、僕は「ジョシュ君のこと」の続きを執筆できなくなってしまったのである。
それは彼の言い出した、こんなセリフが原因だった。
--久しぶりだね。僕がAll about(アメリカではBoutreview-USAに掲載) 「ジョシュ君のこと」という記事はもう読んでくれた? 君の去年の日本での就職活動の顛末を僕なりに書いたものなんだけど。
ジョシュ 「もちろん。よかったよ。うん・・・よかったんだけど、(UFC王者のベルトを剥奪されたきっかけとなった)薬物について部分はもっと詳しく補足しておきたいんだ、聞いてくれる?」
--前回、君に聞いた通り“ハーブ系のものでステロイドではない”と書いたんだが、なんかまちがってたかい?
ジョシュ 「いやいやいやいや、現物を今持ってるから、ちょっと見て。(バスルームから現物を持ってくる)。こいつだ。これがその言ってた“プロホルモン”って薬。バイオテストってアメリカで大手のサプリメント会社が作ってる。液体の飲み薬なんだが。すごい不味い(笑)でも筋肉増強と、ウェイトコントロールに効果があるんだ」
--それはケミカルなもの? それとも天然由来?
ジョシュ 「ケミカルな成分は含まれてるよ。でも、もちろん非合法じゃない。注射みたいなのじゃないし。これでUFCは僕からベルトを奪ったんだ、ひどいもんだろ? そのことをきちんと話しておきたかったんだ」
--注射といえば、マーク・ケアーのドキュメンタリーフィルム(米HBOでオンエアされた“Smashing Machine”)は観た? 結構ショッキングな代物だったけど・・・どう思った?
ジョシュ 「いや、僕はまだ見てはいないんだよね。でも内容については全部聞いた。彼は自分のやってきたバカな事を、またテレビで晒しものにして小銭を稼いだってことだろ・・・。まったく、プロの挌闘家としては最悪だよな。ああいう汚点を、テレビで見せてどうする気かね。彼がステロイド注射やったんなら、そりゃ勝手だけどさ。せめてやるなら隠れてやるぐらいの頭はなかったのかね。ましてそれをテレビで話して、どうだって言うんだろ? プロとしてもってのほかだと思うなあ」
(BoutreviewXX ジョシュ・バーネットインタビュー「21世紀のカール・ゴッチ」より)
ジョシュ 「もちろん。よかったよ。うん・・・よかったんだけど、(UFC王者のベルトを剥奪されたきっかけとなった)薬物について部分はもっと詳しく補足しておきたいんだ、聞いてくれる?」
--前回、君に聞いた通り“ハーブ系のものでステロイドではない”と書いたんだが、なんかまちがってたかい?
ジョシュ 「いやいやいやいや、現物を今持ってるから、ちょっと見て。(バスルームから現物を持ってくる)。こいつだ。これがその言ってた“プロホルモン”って薬。バイオテストってアメリカで大手のサプリメント会社が作ってる。液体の飲み薬なんだが。すごい不味い(笑)でも筋肉増強と、ウェイトコントロールに効果があるんだ」
--それはケミカルなもの? それとも天然由来?
ジョシュ 「ケミカルな成分は含まれてるよ。でも、もちろん非合法じゃない。注射みたいなのじゃないし。これでUFCは僕からベルトを奪ったんだ、ひどいもんだろ? そのことをきちんと話しておきたかったんだ」
--注射といえば、マーク・ケアーのドキュメンタリーフィルム(米HBOでオンエアされた“Smashing Machine”)は観た? 結構ショッキングな代物だったけど・・・どう思った?
ジョシュ 「いや、僕はまだ見てはいないんだよね。でも内容については全部聞いた。彼は自分のやってきたバカな事を、またテレビで晒しものにして小銭を稼いだってことだろ・・・。まったく、プロの挌闘家としては最悪だよな。ああいう汚点を、テレビで見せてどうする気かね。彼がステロイド注射やったんなら、そりゃ勝手だけどさ。せめてやるなら隠れてやるぐらいの頭はなかったのかね。ましてそれをテレビで話して、どうだって言うんだろ? プロとしてもってのほかだと思うなあ」
(BoutreviewXX ジョシュ・バーネットインタビュー「21世紀のカール・ゴッチ」より)
正直に告白するが、この段階で、僕のドーピングに関する知識はお寒い物だった。
今なら、“プロホルモン”という名前を聞いて、黙ってスルーする事もないと思うのだが、当時の僕にとっては、“へえ、そんな名前の薬があるのね? 化粧品みたいな名前だな”と、この重要なキーワードを受け流してしまったのである。(プロホルモンがどういう薬かは、後でお話しよう。)
ジョシュ自身、このインタビューで語っている通り、いわゆる「筋肉増強剤(アナボリック・ステロイド)」は使っていないと言っていたし、2002年の夏(「ジョシュ君のこと」の頃の日本滞在時)にも、彼はドーピングテストが恣意的に行われたUFCの罠であり、「ケミカル(化学薬品)は一切使ってない。ナチュラル(自然由来)だけだ」と主張し続けていた。
僕が彼のいい分を鵜呑みにしてしまったのには原因がある。いま思えばバカな話だが、彼が繰り返す「ナチュラル」という表現を、僕は勝手に当時アメリカで流行していた「ファットバーナー(脂肪燃焼薬)」の類いだと思い違いしていたのである。インタビュー中にも「君に聞いた通り“ハーブ系のものでステロイドではない”と書いたんだが」とかトンチンカンな事を言ってしまっているのが残っている。
僕は「ナチュラル」の一言から、ジョシュの急激な減量に使った薬剤を、ハーブ系の漢方薬的な物が多い「ファットバーナー」と思い込んでしまっていたのである