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リングス活動休止から3年。カリスマの次の一手は何か 前田日明再浮上の背景(下)(2ページ目)

リングスの創始者前田日明が、三年ぶりに表舞台に浮上した。その背景にあるものと、前田が業界にもたらした功罪について、再度分析してみよう

執筆者:井田 英登

帰る場所を持たない前田日明

さて、過去の話はこれぐらいにして、
前田復帰に関する「なぜ」と「今」について考えてみよう。

実際、ファンの間には、今も「前田幻想」は根強い。
ここまでも書いて来たように、彼の人格の魅力はその頑固さや一徹さにあると思う。地上波TV偏重、イベントとしても巨大化の一方を突っ走る現在の格闘技界の有り様に疑問を感じるファンにとって、前田という反骨精神の固まりのようなキャラクターが、一種時代のアンチテーゼとして魅力的に映るのは理解できる。

だが、その一方で現実的に、今の格闘技界に前田の戻る余地がないのも事実だ。既にリングスの代名詞でもあった「ファイティングネットワーク」は機能しなくなって久しく、主たる現役選手はPRIDE(もしくは一部その他の団体)に吸い上げられるか、格闘技界の表舞台から姿を消すかのいずれかの道を歩んでいる。かつて、蜜月時代を築いた日本衛星放送WOWOWとの関係も、リングス最終期には終焉している。

かつて袂を分かったK-1はもちろん、「引き抜き被害」を言い続けて最後まで敵視しつづけてきたPRIDEにも、当然前田の居場所は無い。

リングス崩壊後、三々五々散ったいわゆる“リングスジャパン”の選手は何らかの形で格闘界/プロレス界に「再就職先」を見つけているが、前田当人にそうした柔軟さを求めるのは無理だろう。時代をリードして来た矜持に賭けて、ライバルの軍門に下るということは出来ないにちがいないからだ。

また、ことあるごとに苛烈な言葉で業界の現状批判を繰り返す前田には、トラブルメーカーのイメージも色濃い。前田の個人マネージャーでもあり、ブッカーとして海外選手の獲得を主業務としていた内田女史やパンクラス尾崎社長への暴行事件など、実際に法廷に持ち込まれた事件もあり、表立って前田支持を打ち出しているのは、リングスの元社員であるZSTの上原譲広報ぐらいではないだろうか。

今回の上井氏とのコラボレーションに関しても「あくまで上井個人が新しい事をやろうというので、前田さんが助言をしてやろうということになっただけ。具体的にはお金も出していない」(上井氏)という言葉にある通り、全面的な“業界復帰”と受け取るのは、少しニュアンスが違うのかもしれない。

上井氏はあくまで苦楽をともにした旧UWF時代の同志であり、その彼の独立にあたって何らかの援助をしてやりたいという前田の侠気や、青春時代を過ごした新日本プロレス時代への郷愁が働いただけ、と見るべきではないだろうか。

ただ前田と言う人は、自分のした発言には責任感をもって行動するという側面も持っている。

リングス休止以降も、たまに雑誌の求めに従ってインタビューなどに姿を現す事のある前田は、「第二次リングスの再興を考えている」という言葉を再三口にしている。いつまでもそれを形にしないまま、ずっとプロレスイベントのスーパーバイザーに収まっていられるほど、彼は無神経ではあるまい。

もし上井氏がこのプロレスイベント運営を軌道に乗せた場合、逆に前田の「リングス再興」の夢に手を貸す事は、考えられないわけではない。
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