不幸が重なった日本凱旋試合
だが、勝負は厳しい展開となった。序盤、ヒーゾの強烈きわまりないローの権勢で、なかなか組みの間合いに入れない高阪は、作戦通りに試合を進める事ができなかったのである。一口にストライカーとは言うものの、ヒーゾはマルコ・ファス門下でグラウンド技術にも長じているマルチタイプ。むしろ一芸名人のルッテンより手強いとも言える。
なかなかタックルに入れない高阪は、ヒーゾの間合いで距離を詰められてしまう。グラップラー出身選手の欠点として、どうしても顔面のガードが甘くなる癖が抜けていなかったこともあり、ジャブで顔面を撃たれ、ローで下半身を崩される一方的な劣勢が続く。最終ラウンドには、ついにヒーゾが一気に勝負に出てくる。ワンツーでの突進をモロに顔面にもらった高阪は、タックルでなんとか劣勢挽回に出ようとしただが、そこにカウンターのアッパーを浴びて撃沈。そのままレフェリーストップが宣告されたのだった。
凱旋試合はまったくいいところなしのままに終わった。
さらに悪い事に、この大会の楽屋裏では、高阪の師前田日明がかつての同僚安生洋二に、物陰からの襲撃を受けて意識を失うという“事件”が発生。すっかりマスコミの目は、プロレス的色合いのこの事件に奪われ、世界メジャーの頂点を争う日本人選手の母国での凱旋試合、というこの大会の歴史的意義を看過してしまったのである。
当時UFCを運営していたSEGは、日本市場での展開に大きな疑問を感じたであろうし、高阪の背景にある前田リングスの複雑な因縁の構図(実際は高阪には一切関係ないUWF時代の問題でしかないのだが)への不安、そして、もちろんヒーゾ戦で見せた高阪自身の試合内容の煮え切らなさも加えて、彼をトップコンテンダーとは見なさなくなってしまったのである。