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2005年世界大会を前に浮上した組織と競技の二大問題 「大道塾=空道」への危機感

来年に第二回世界大会を控え、国内の総仕上げとなる「北斗旗無差別大会」が開催された。復帰を果たしたエース藤松の闘いぶりに露呈した大きな問題点とは。

執筆者:井田 英登

大道塾=空道という体制は是か?

藤松泰通
北斗旗の頂点に返り咲いた藤松。しかしその闘いぶりには、空道の王者と呼ぶに足る“何か”が欠けていたように思える
空手から進化したアマチュア総合格闘技「空道」の頂点を争う、北斗旗無差別級大会が、11月27日代々木第二体育館で開催された。以前にも僕はこのオールアバウトの記事の中で、空道をオリンピック競技化可能なアマチュア格闘技の最右翼としてを取り上げている。それはとかくプロイベント偏重に傾きがちな現在の日本の格闘技の現状の中で、頑なまでに「競技性」と「アマチュア」であることにこだわった空道の姿勢が、その抑止力として機能するのではないかと考えたからでもある。

現在大道塾はNPO法人として「国際空道連盟大道塾」を設立、“開かれた競技としての空道”確立に乗り出している。方向性としては非常に正しいし、アピールの仕方を間違えなければ、アマチュア競技として非常に魅力的な舞台になる可能性があると思う。

ただ、今回の大会を見た限り、やはり「大道塾」という“一流派”の色合いがまだまだ濃いなという感想を持った。オープントーナメントという形式ではあるものの、出場選手の大半は相変わらず大道塾の選手で占められており、審判員もざっと見たかぎり外部の人間は参画していないようだ。アマチュア競技の広がりを考える上では、この“党派色”はどうしても気になる。

昨年の無差別は、ディファ有明という一回り小さな会場での開催ということもあり、満員の会場の熱気が選手の背中を押す、いい大会になっていたと思う。だが、今年、“聖地”代々木に戻ってみると、客席はガラガラという考えられない状況が待っていたわけだ。この動員状況は、明らかに以前の無差別と比べても低調だったと思う。当然アマチュア大会である以上、プロの営利団体のように観客動員でその成果をはかられる必要は無い。だが、かつて総合格闘技ムーブメントの中心的存在であったこの団体が、ここまで一般の格闘技ファンの興味の埒外になってしまったのかと思うと、“危機”状況であると言う他ない。たまたまファン層の重なるであろう新極真の全日本大会と日程が重なったという要素はあるにせよ、塾生以外の外部の格闘技ファンが、北斗旗に対する興味をもっていない状況は、間違えなくこの「競技」の死命を制する大問題だと言うべきだろう。

また、これは後述するつもりだが、内容面でも欠場明けの藤松泰通の独走を許した事も、僕には、大会に大道塾以外の勢力が存在しなかったせいだと思えてならない。昨年、一昨年と優勝戦線を揺るがした空柔拳会館のアレクサンダー・ロバーツはプロに転出。北斗旗は“卒業”と宣言している。本来、彼個人は藤松との決着を望んでいる部分もあったが、昨年の準決勝で優勝者の山崎進(大道総本部)との一戦で味わった“アウェイ判定”には若干承服できない部分が残ったようで、「北斗旗では外の人間は勝たせてはもらえない」と、今年の参戦を見送っている。

実際、公式審判員のほとんどは大道塾内部の、支部指導者陣であり、外部の選手に点が辛い。(自らの担当試合を離れた審判員が、自分の支部の選手の試合で激を飛ばしている光景は、大会の中で珍しいものではない。)無論、山崎vsロバーツ戦での判定が、圧倒的な山崎贔屓に傾いたとは僕は思わない。ただ外部選手にすれば、やはり“歓迎されていない”敵対的空気の中での試合はやりにくいだろうし、明快な差のない勝負を判定で“切り捨て”られたという意識は、結局その“場”への不信として残る。名勝負必至であった藤松vsロバーツが結局こういう形で実現せずに終わった状況を思うと、やはり今後審判陣にも「大道塾」の、ではなく「空道」の理想に準じる無色中立の布陣を整える事が急務ではないかと思われる。
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