"イノキボンバイエ2003~馬鹿になれ夢をもて~"
2003年12月31日(水) 兵庫・神戸ウィングスタジアム
放映:日本テレビ放送網
【イノキボンバイエ2003の注目カード3試合はこれだ】
第8試合 イノキボンバイエ2003特別ルール
藤田和之(日本/猪木事務所)
イマム・メイフィールド(米国)
第7試合 イノキボンバイエ2003公式総合ルール 5分3R
エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア/レッドデビルチーム)
永田裕志(日本/新日本プロレスリング)
第4試合 キング・オブ・パンクラス無差別級選手権 5分3R
ジョシュ・バーネット(米国/新日本プロレスリング/王者)
セーム・シュルト(オランダ/ゴールデン・グローリー/2位
藤田和之(日本/猪木事務所)
イマム・メイフィールド(米国)
第7試合 イノキボンバイエ2003公式総合ルール 5分3R
エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア/レッドデビルチーム)
永田裕志(日本/新日本プロレスリング)
第4試合 キング・オブ・パンクラス無差別級選手権 5分3R
ジョシュ・バーネット(米国/新日本プロレスリング/王者)
セーム・シュルト(オランダ/ゴールデン・グローリー/2位
→試合結果はこちら
■イノキボンバイエ2003:マッチメイクの意図はこう読め
正直いって仕上がったマッチメイクを見れば、決して悪いカード編成ではないと思う。
もしこれが、新団体の旗揚げ興行のカードだと言われれば、(プロレスラ-偏重傾向はあるものの)そこそこいいカードが揃ったとさえ言っていいだろう。
だが、ここに至るまでの紆余曲折を思うと、格闘技界全体に及ぼした悪影響の方が大きい。大晦日の三大中継は世間の注目を浴びた“ハレの場”であり、普段格闘技を見ない層もその成り行きに注目しているわけで、“引き抜いた・抜かれた”の騒動でダークなイメージばかりを世間に広げてしまったのだから。
ミルコの欠場は怪我による不可避の「事故」であったとは言え、その後のドタバタ劇は運営スタッフの不慣れもあって、ファンの期待感を殺ぐ方にしか機能していなかったと思う。まして、対戦契約まで結んだ藤田の対戦相手レイ・マーサーが、試合前日になって来日を拒否するといった展開は、あまりにも杜撰すぎる。
第一、当初の構想通りPRIDEでチャンピオンを張るヒョードルと、暫定王者であるノゲイラ、そしてトップコンテンダーであるミルコの三人が、神戸ウィングスタジアムに登場していたとしても結局それは「PRIDE番外編」でしかない訳で、オリジナリティの点では疑問が残る。
また、表向きの選手の取り合い騒動だけではなく、この興業は業界に大きな悪影響を残してしまった。
開催決定から日がなかった事もあり、イノキボンバイエスタッフは選手をかき集めるために、各選手に天井知らずの高額ギャランティを提示したという。
今後、この金額をベースに各団体に参戦交渉をする選手が相次ぐことは目に見えており、ギャラのインフレーションが進めば、イベントの経費も跳ね上がり、夢のカードも実現しにくくなる。結局、そのことでファンはチケットを買わなくなり、格闘技バブルが崩壊するという流れが予想される。そんな悪循環を生みだしたスタッフは、果たして今後この業界をどうしていこうと考えているのか、疑問が残る。
ただ、このところミルコ、ヒョードル戦と黒星が続いた藤田和之が、ヘビー級ボクサーとの異種格闘技戦に挑むというマッチメイクは、一服の清涼剤となった気がする。確かに選手交代劇のドタバタ劇はこの一戦でもあったとはいえ、寝技に制限のない総合格闘技のルールから一歩踏みだして、ボクサーのパンチに身を晒してみせようとする心意気は買いたい。多分、勝負はファーストコンタクトのパンチ一閃か、藤田がそれをかいくぐってのタックルを決めるかに掛かっているだろう。
実際、「競技」としての意味はさほど高いとも思わない。しかし「勝負」の緊張感、凄みをファンに感じさせることが出来れば、それだけで意義は生まれる。以前も書いたことだが、「異種格闘技戦の意味は結果を出すこと」に尽きると思う。プロセスではなく、負けられないという意地を選手が見せれば、普段格闘技を見ない一般層にも“伝わる”闘いになる可能性がある。その意味で、この時代錯誤的な試みをあえて選び取った藤田の気持ちに期待したい。
一方、なし崩し的に浮上したヒョードルvs永田の一戦だが、かつてミルコにたった一発のハイキックに沈められた永田が、ロクに準備期間もないままVTに再び挑戦するという事は、普通に考えれば意味がない行為でもある。また2月1日のPRIDEヘビー級タイトルマッチに一ケ月の猶予しかないヒョードルが、拳の怪我を抱えたまま参戦する事も、実際無茶苦茶である。にもかかわらず、この一戦に意義を見いだすのは難しい。ただ、テーマに掲げられた“馬鹿になれ”を体現するカードとしては、メインにふさわしい取組でもある。ただ、その無謀さ、破天荒さが、ブラウン管を通じて視聴者に通じるかどうかは疑問だ。
あえて「競技的」メインとしてクローズアップしたいのは、むしろパンクラスの無差別級王座決定戦として行なわれる、ジョシュ・バーネットvsセーム・シュルトの一戦だ。コノカードは既に、UFCで行なわれ、勝利したジョシュがUFC王座挑戦権を手にした、出世試合でもある。グラウンドに脆さを持つシュルトを素早くテイクダウンして、延々グラウンドに押さえ込み圧倒した試合内容は、「巨人潰し」の定番的内容であった。だが、その後PRIDEとK-1を巡ったシュルトが、ジョシュの弱点である顔面ガードの甘さを突いてくれば、リベンジも十分ありうる。
既に日本のプロレスファンにはおなじみとなったジョシュが、日本中の注目を浴びるこのリングで、再びベビーフェイスぶりを発揮することが出来るか?この一戦を制して人気者の座を手にすれば、今後ミルコ、ヒョードル、ノゲイラといったトップ三強との対戦も見えてくるだけに、王者の闘いぶりに注目されるところだ。