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タイソン、ボタらボクサー参戦でK-1復活はあるのか 「世界の壁をぶちやぶれ!」(2ページ目)

世界を揺るがしたタイソンとの契約に続いて、IBFボクシングヘビー級世界王者フランソワ・ボタがK-1参戦を決めた。この衝撃的事件は競技としてのK-1復活の序曲か? 新運営会社FEG設立を含め、混迷のシーンを分析。

執筆者:井田 英登

だが、それでも、この一戦を光明として位置づけたのには意味がある。それは、ボタが世界的メジャースポーツであるボクシング界で、曲がりなりにも名前を売った選手であるという、政治的効果を期待したからだ。

特にアメリカにあって、WBA、WBC、IBF、WBOのタイトルに絡んだ選手の動向は、どうしても大きな話題として喧伝される。石井館長体制時代からアメリカ市場進行を再三試み、常にボクシング界の閉鎖的な壁に阻まれてきたK-1にすれば、タイソン、ボタの獲得は、これまで歯牙にもかけられなかった巨大ビジネス=ボクシングに、“アリの一穴”ともなりうる橋頭堡を築いたことになる。タイソン絡みの契約金捻出に失敗し、石井館長が脱税容疑に問われたという因縁も忘れてはなるまい。ボクシング界とのアメリカ市場をめぐる企業戦争はK-1にとってはまさに悲願だっただけに、タイソンのディール獲得といい、ボタ参戦という話題は、リングの上での試合だけではない大きな政治的効果をもたらすはずなのだ。

2000年の夏前後に石井館長が、タイソン獲得に動いたのは紛れもない事実で、当時、バンナとの白熱のド突きあいを制したベルナルドを切り込み隊長に、タイソン戦を画策していたのである。ただ、巷間に伝えられる“仲介人へのリベート”問題が事実であったかは別として、ボクシング界の持つ「市場閉鎖性」に阻まれて、ある時期からタイソン獲得を一切口にしなくなったことをご記憶だろうか。

実は今回初公開の事実なのだが、筆者は、その年7月に開催された仙台のジャパンGPの前日記者会見で、それまで精力的に行ってきたタイソン獲得の成果を館長にインタビュウして、奇妙な一喝を受けた経験がある。ちょうど、館長は藤田和之のK-1参戦宣言を受けて、猪木軍団との対抗戦構想を打ち上げたばかり。筆者にすれば、おなじタイソン獲得を口にしたアントニオ猪木氏とのつばぜり合いの一環として「タイソン獲得のほうも猪木さんとはマッチレースになると思うのですが、進捗はどうなっていますか?」と水を向けただけなのだが、このとき石井館長の顔色が一気に変わったのを今でも忘れられない。

それまで非常にご機嫌に話をしていた石井館長が、突如「今、そんな話してへんやろう!」と声を荒げたのだ。インタビュウ稼業をやっていると、対象の触れて欲しくないポイントにしばしば質問が及んでしまうことがある。実際、僕らはそれを「地雷を踏む」と称しているが、このときの館長の感情の動きはまさに、ひそかに地面に隠した感情のキーを思わぬ角度から踏んづけられたといった感じであった。当然故意の攻撃ではないから、こちらもこの反応には偉く驚いたものだが、内心“あ、なんか交渉が上手くいかなかったんだな”とだけ感じて深追いはしなかった。実はこの大会に先立つ5月に石井館長はアメリカ予選のためにラスベガスに渡っている。この時に、タイソン獲得を根本的に諦めざるを得ない決定的な破局があったのかもしれない。

まあそれはそれとして、石井体制から、谷川/角田のツープラトン体制に切り替わって以後のK-1に対する、コアファンの評価は低迷の一途をたどった。安易なプロレスラーの起用や、無意味なギミックによる話題づくりなど、このオールアバウトでも数回に渡ってその迷走ぶりに関しては批判を繰り返してきた。僕自身、K-1が本来進むべき道は、2000年に提示された「世界進出路線」にあると今でも信じている。それだけに、谷川プロデューサーが企図した「国内プロレス融合路線」には、反発を表明してきた。

事実、今年8月のラスベガス大会でのタイソン招聘に関しても、彼が婦女暴行容疑で有罪判決を受けて、日本入国が困難であること、また破産宣告直後であったこと、あるいはアメリカ国内でのボクシングマッチが12月に予定されていたことなど、K-1参戦を実現するにはあまりに現実性のないファクターが幾つもあったことから、“所詮、話題先行のギミックでしかないのでは?”という疑念がつきまとい、この話題について記事化することを保留してきた。
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