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乱闘、ルール無視続出。迷走するK-1シーンに緊急提言 「リーダー角田一人体制待望論」(2ページ目)

石井館長収監以降、絶対的な指導者を失って迷走する巨大組織K-1。先日のモンターニャ暴走に代表される不祥事連発の現状を救えるのは、強靱な意志をもったリーダー角田信朗の決起だけではないのか?

執筆者:井田 英登

回の反則シーンを観て、K-1ファンがすぐ思い出すのは、この丁度一年前に行われた2002年6月のK-1 Japan富山大会での、ボブ・サップvs中迫選手の試合だろう。あの試合でも、サップはコーナーに詰めての攻撃中にいきなり暴走状態に入り、パンチ連打を浴びてグロッキー状態になった中迫に踏み付け攻撃を浴びせて、反則負けを喫している。

その後、八月のDynamiteでのノゲイラとの熱戦、十月、十二月のホースト二連戦で活躍をみせたサップは、一躍ヒーローとなり、このときの反則暴走は一切無かったことのようにされている。それどころかK-1の顔として前回今回と、Japan軍団に対抗するBeast軍団のリーダーに祭り上げられて、試合もしないのに大会名の主にまでなっているのだ。

どんな無法をやっても目立ってウケれば、最終的には官軍という論理である。そんな「やったもん勝ち」「目立ったもん勝ち」の無法が一年前あたりからK-1リングの基調になっているわけである。

体のトップである石井館長が、脱税という社会規範を踏み外した「ルール無視」に走った事に端を発して、今年のK-1のシーンは一斉にルールを無視せよという指令でも下ったかのように、無茶苦茶なことが乱発されるようになった。記者会見では消火器を振り回してのプロレスまがいの乱闘騒ぎが日常茶飯事のように繰り広げられ、K-1 World MAX でもきちんとした出場交渉を受けていないサムゴー選手が、さも出場するように謳ったために、本来のマネージメント側から抗議を受けるなど、これまでなかったような不手際が次々に勃発した。

また、マッチメイク面でも、ニュージーランドの怪奇派プロレスラーのようなTOAや、新日本プロレスの中西選手といった、K-1的になんの実績もない選手をリングに上げてしまっているのも、ある種の“ルール違反”にほかならない。なにしろ世界各地でWorld GP出場を目指して地方トーナメントから闘っている選手達が居るのである。それを飛び越して話題性だけでぽっと出の選手を抜擢してしまうのなら、どこにも予選の意味はない。無論、トーナメント制のWorld GPとワンマッチ中心のJapanの違いといえばそれまでだが、同じK-1という名を冠せられたイベントの中で、これほどの不整合を演じてしまっていては、誰も耳を貸さなくなってしまう。

モンターニャの暴走にしても、結局こうしたイベント全体が“タガの外れた”状況だからこそ起きた事件だと思われてならない。「こんな半端な見せ物なんだから、オレの“オシゴト”は勝つことじゃねえよな? こんなふうに盛り上げればオッケー?」とばかりに足下を見られたのだ。もっと言えば、そんな茶番に何万円もするチケット代を払わされた観客こそ、一番愚弄されたといってもいいだろう。

かつてのK-1には、仮に誰かが「目立てば勝ち」とばかりに利己的な暴走を仕掛けようとしても、それを許さないだけの権威や世界観があった。そもそもそれはプロデューサーであった石井館長自体が、この競技をボクシングや柔道にも匹敵するよううな世界的スポーツに育てようという熱意を持ち、その世界観を支えていたから出来たことである。

たしかに石井館長自身はハッタリの効いた話題作りが大好きな人だったし、時にはやりすぎではないかという演出も試みてきた。実際、昨年のボブ・サップの売りだしでもかなりの部分虚実をないまぜにしたキャラ作りを押しだして、世間の関心を買おうとしたのは事実だ。しかし、どんな“お遊び”を演じても、最終的に当日のリングの上ではリアルファイトの醍醐味を見せ付けて、満足をファンに届けてきたはずである。そのことを現行の指導陣は見失っているようにしか思えない。
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