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3.30ミルコ戦敗北で露呈した“ザ・ビースト”の脆さ 「ボブ・サップ無敵神話を剥ぐ」(3ページ目)

3.30のミルコ戦に敗れたボブ・サップ。早くもブーム終焉の声も聞こえる今、半年の封印を解いて、All aboutがお贈りする“サップ現象”の格闘技的読み方。

執筆者:井田 英登

■サップは本当に強いのか?

さて、余談が長くなった。クラスの問題は無差別級という括りで無理やりにでも横に置くとして、「サップは本当に無敵/盤石な強さを持っているのか?」という問題を考えてみよう。

まず、サップの戦略的特徴は、試合序盤の遮二無二なラッシュにある。ゴングが鳴ったら、とにかく前に飛びだして相手の進路をふさぐ。パンチパンチで相手に反撃させる隙を与えずに距離を詰めてしまうわけだ。技術もクソもなく、ただがむしゃらにラッシュを浴びせ、相手に反撃の余地を与えない。特にホーストのように、コンビネーションで相手の弱点をじわじわとえぐりだす長期戦タイプのテクニシャンは、この戦法は苦手なはずなのだ。ホーストの打撃は、一撃で相手を倒すパワーを持っていない。だから、序盤には相手がラッシュを仕掛けて来れないようにローを放ち、相手がパンチの距離に入れないようにし、それをピンポイントで繰り返すことによって、相手の下半身を攻め潰してしまうのが必勝パターンである。

だが、サップの戦法は、ホーストのそうしたファイトスタイルを無効にしてしまう。相次ぐ二回の対戦で、精密機械と称されたホーストに一回もトップスピードを出させなかったことが、サップの勝利を呼んだのだから。まさに、サップはハブにとってのマングース=ホーストの“天敵”であったわけだ。だが、別の言い方をすれば、ホースト二連覇は、必ずしもサップのオールマイティな強さを証明するものではない。

■一瞬の勝負をわけたパッシングポイント

事実、ホーストとそう体格の変わらないミルコが、勝利を現に手にしているのだから、サップというダンプカーを追い越すF1マシンは確実に存在する。ではミルコはどこで、ホースト戦には無かったパッシング(追い抜き)ポイントを発見したのだろうか?

3月30日の試合でミルコの勝利のポイントは、一般的にサップの出足を止めた左ミドルだと言うことになっている。

突進するサップを左ミドルで止め、顔面が空いた所にぶち込んだ左フックでKOしているのだから、基本的にはその読みで間違ってはいない。ただ、大きな意味で“サップの突進”を止めたのは、そのミドルが出る前のシークエンスにあったのではないかと見ている。

あの試合でも、サップはホースト戦同様、ゴング直後に強引なラッシュを仕掛けて、ミルコとの距離を潰すことに成功している。ミルコも研究の成果を見せて、バックステップで距離をキープしようとはしているのだが、すぐに捕まってボディにパンチを浴びてしまっているのだ。これまでのサップなら、ここで問答無用のタコ殴りを浴びせて勝利を奪っているシーンである。

だが、ミルコはこのときにパンチをローブローだと主張して、30秒の“仕切り直し”を勝ち取っている。ここが、どうも勝負の分かれ目になったような気がしてならない。
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