「プロローグ~復活への序章」
 2003/04/13
 [キングダム・エルガイツ] 多摩市永山z-zone



 <メインイベント>エルガイツルールLevel-1無差別級10分1本勝負
 ○大橋秀幸(キングダム・ダークウルフ)
 ×水埜正之(シラット)
 3'27" チョークスリーパー
 


 




一月のAll aboutでは、 和術慧舟会東京本部主催の「DEOLITEION」を“インディーズ総合格闘技の新しい波”として紹介したばかりなのだが、今月も日進月歩の勢いで進化していく総合格闘技の世界で、また一つユニークな試みを打ちだしてきた団体を紹介してみよう。

知る人ぞ知る、カルト格闘家・入江秀忠率いる、キングダム・エルガイツの新ルール「エルガイツ・ルール」がそれだ。

■知る人ぞ知るカルト格闘家・入江秀忠

これまでいきなり何の脈絡もなくヒクソン戦をぶち上げてみたり、リングの上で涙ながらに「この団体を絶対潰しません!」と大仁田ばりのマイクアピールを披露するといった“奇行”ばかりがクローズアップされてきた、奇妙で少し変わり者の格闘家が東京都多摩市に居る。名前は入江秀忠、33歳。もちろんマニアでもなければ名前を知らないような、マイナー格闘家である。

元はと言えば大相撲出身の“どすこいシューター”として名を売りアマチュア修斗全国大会のヘビー級王者を始め、コンバットレスリングでも優勝経験を持つアマチュアきって強豪選手だった男である。特にその強い腰と、寝技での実力は東京のアマチュアシーンでは、そこそこ知られた存在でもあったのである。

ただプロ転向を決めて参戦したはずのキングダムが、入団早々経済的に破綻。社会人経験のある入江はその名跡を一人で引き継いで、アマチュア格闘家からいきなり団体経営者に転身することになってしまう。

実際、アスリートとして生きる人間にとっては全く無用な苦労でしかないのだが、あちこちのジムを渡り歩き、闘うマットすらおぼつかなくなっていた入江にとっては、このマットが最後の命綱に映ったのかもしれない。ただ、経営の傍らの現役生活では、どうしても本格的なプロモーションはできないし、気の利いた対戦相手を準備する金もない。そんなこんなで、彼の名前は中央からすっかり忘れ去られたようになってしまった。

北沢タウンホールや、地元である多摩で自らの道場を舞台に、細々と闘っているらしいという噂はあったものの、正直いって対戦相手は無名の格闘家ばかり。格闘技マスコミは、そんな超マイナー団体に対してページを割くことは一切無かったのである。

そんな入江とキングダム・エルガイツが、ようやく中央のシーンの片隅に浮上してきたのは、一昨年の末のことだ。二年ばかりのアンダーグラウンドな活動期間を通じて、入江は無名選手の吹溜りと貶されつつも、曲がりなりにも後楽園ホールで自主興行を開催するだけの力と選手層を整えて見せたのである。

だが、無理に無理を重ねた背伸びの代償は決して安くはなかった。PANCRASEの稲垣克臣を対戦相手に迎えて、グラウンドで圧倒、判定勝ちしたと言えば聞こえはいいが、実際の試合内容は大会運営の準備で連日徹夜状態が続いていたこともあり、相手を押さえ込むのが精いっぱい。試合が終わるころにはどっちが勝者かわからないようなスタミナ切れの青息吐息で、どこから見ても判定に救われた薄氷の勝利だったのである。そんな“しょっぱい”試合をやっておきながら、またもやお得意のマイクアピールを展開。涙ながらのヒクソン挑戦をぶち上げて、ファンしかいないはずの客席の失笑を買ってしまう。

間違っても憧れの対象にはなりえない、のほほんとしたどこかカバを思わせるルックス。なのに、なぜか入場曲は自己陶酔の極地の尾崎豊。アンバランスでどこか座りの悪い物言いも、普通なら人を引かせてしまいそうなものだが、人徳というか、大口の割には実直さとそこはかとない頼りなさが覗いて、聞く人をうっかり突き放せない気分にさせてしまう男。意地悪な言い方をすれば、カッコ悪い自分にまるで気づいて居ないだけの勘違い男。しかし、その駄目さが尾を引いて母性的な保護欲をそそるのも事実。さらに格闘家としては気が小さく、試合中友達を殴れないような余分な優しさまでもっていて、現実性の薄い大きな話にばかり夢中になる夢想家。異常なまでの粘り強さと、スコンと抜けた間抜けさが同居する、まさにカルトの王道を行く不思議系格闘家。それが入江秀忠という男なのであった。