格闘技/K-1・PRIDE・格闘技関連情報

連載「“リアルファイト”の10年間(2)」 プロレスとの不連続線~佐山編(2ページ目)

プロ格闘技興行大きくが変動したこの10年間をテーマに、「格闘技」の意味と現状をディープに掘り下げる連載連載第2回。今回の話題は「梶原一騎」と「佐山聡」、そして「UWF」。

執筆者:井田 英登



■梶原&猪木共同体とカール・ゴッチの遺児たち=UWF

しかし、人は一回見た夢を忘れる事は出来ません。
それどころかよりリアルで、奥深い世界を求めてしまうものです。そうした波の高まりを受けて、格闘技的価値観と技術に歩み寄ったプロレスのスタイルを模索したのが、UWFという団体です。

猪木が新日本プロレスを旗揚げするにあたって、「ストロングスタイルプロレス」の理念的よりどころにしたのは、カール・ゴッチという異端のプロレスラーでした。ドイツ出身で非常に理想主義だった彼は、異常に技術にこだわった異端のプロレスラーでした。

それゆえに、ヒロイズムとショーマンシップが支配するアメリカのプロレス界では出世することが出来ませんでしたが、真の意味での強さにこだわるその姿勢は、知る人ぞ知る孤高のレスラーとして彼を伝説化していきました。猪木は彼を旗揚げ戦に招いて、肌を合わせることでそのイズムへの共感を世に示しました。その後、新日本の顧問的存在となったゴッチの元へ、猪木は藤波辰巳を始め、新日本プロレスでも特に目をかけた才能の有る若手レスラーを送り込みます。

こうしてゴッチの薫陶を受けることになった、佐山聡、藤原義明、木戸修、前田日明、高田延彦といった元新日本プロレスのメンバーたちは、猪木の思惑以上の理想主義を胸に抱くようになります。それは自分たちの試合のベクトルをより格闘技的ニュアンスを強めた「打・投・極」の技術に置いたプロレスであり、より過激で迫真的な格闘技方向への接近でした。

UWFと言う団体が生まれたのには、TV局の放映権や猪木の借金問題などいろいろ生臭い問題も介在したのですが、基本はより理想的なプロスポーツを目指すゴッチイズムを受け継ごうとした、彼等若きレスラーたちの理想主義にあったことはまちがいありません。
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます