広島東洋カープの新外国人投手フェルナンデスは、その投球のほとんどがナックルボールという「フルタイム・ナックルボーラー」だ。近鉄に在籍したマットソン以来のナックルボーラーに注目したい。
フェルナンデスの成績
広島に入団した新外国人右腕、ジャレッド・フェルナンデスはユタ州出身の35歳。メジャーリーガーとしては5年のキャリアがあるが、シーズンの多くを3Aで過ごし、時折メジャーの機会が与えられるという、いわゆる「エスカレーター選手」だ。
フェルナンデスのメジャー5年間の通算成績は4勝7敗、防御率は5.05である。2006年シーズンはミルウォーキー・ブリュワーズに在籍、0勝0敗だった。2005年には3Aで5勝5敗の成績を残している。
フェルナンデスは投球の9割方がナックルボールを投げる、いわゆる「フルタイム・ナックルボーラー」だ。広島はこの選手を推定年俸20万ドルで契約したが、日本プロ野球にはあまり馴染みのないナックルボーラーが通用するのかどうか、広島は面白い選択をしたように思う。この年俸で仮に2ケタ近く勝てたとすれば、広島は大成功の補強ができたと言えるだろう。
では、ナックルボーラーとはどういうピッチャーなのか?
ナックルボーラーとは?
ナックルボールは、二本指または三本指の爪でボールを握り、手首を使わずに爪でボールを弾きだし、腕の振りだけで投げるボールだ。ベースに到着するまでにボールはほとんど回転せず、ボールの縫い目などにかかる空気抵抗により、ベース際で予期せぬ変化をするという「魔球」だ。
メジャーリーグにおけるナックルボーラーの代表格は、ボストン・レッドソックスのティム・ウェイクフィールドで、ヤンキースの松井秀喜がこのウェイクフィールドのナックルボールを苦手にしていることで知られている。
ナックルボールは、ある意味アメリカ野球における「野球文化遺産」的な存在で、古くはニークロ兄弟をはじめ、キャンディオッティ、ウェイクフィールドなどの名ナックルボーターを歴々と輩出している。
しかし、ナックルボールを投げる技巧の難しさから、ナックルボーラーの名投手は絶滅の危機に瀕している。すでに40代になるウェイクフィールドの後を継ぐ者がなかなか出てこない状況だ。
日本人プロ野球選手では、本格的なフルタイム・ナックルボーラーは登場していない。たまに投げる選手はいるが、添え物的な感触は否めない。しかし、来日した外国人投手の中には先例がいる。以前、近鉄に在籍したナックルボーラー、マットソンの話を紹介しよう。
【元近鉄・マットソンの場合】→