八百長の温床とは?
結局、台湾プロ野球が賭博・八百長の温床になりやすい部分をまとめてみると、以下のようになる。
●1 台湾に公営ギャンブルが少ないこと
●2 リーグが盛り上がると、賭博の対象になりやすいこと
●3 選手の給料が安いこと
●4 選手の絶対数が少なく、アマ時代からお互いに近い存在であること
●5 ブラックマネーなど、野球リーグの外側に金が溢れていること
本記事のPART1でも説明したように、1と2は切れない関係にある。また台湾人の国民性もある。そして問題は3だ。台湾人選手も徐々に俸給が良くなってきたとは言え、野球人生後を考えると、濡れ手に粟の金に目がくらむ。実際、2005年に逮捕されたのはあまり給料の高くない準レギュラーのキャッチャーだったし、中南米出身の選手が手を染めていったのも、やはり相対的な給料の安さにある。日本における「黒い霧事件」時代も、選手の給料は決して高くなかった。
そして4は、特に台湾球界に根深い特徴だ。アマ時代にオリンピック代表のキャプテンだった選手が、八百長選手の元締めだったということもあった。また、台湾人選手と地縁・血縁などで黒道(ヤクザ)が接触しやすいという環境もある。その上にリーグの盛り上がり・ブラックマネー溢れなどが重なると、容易に大がかりな賭博・八百長事件が起こりやすいということなのだ。
八百長のどこが悪いのか?
では最後に、言うまでもないことかもしれないが、八百長の何が悪いのかを語ろう。明らかに「筋書き」のあるプロレスなどとは異なり、特に野球は同レベルのチームが何十試合も消化してやっと上下の決着がつく、デリケートな競技である。また、八百長をしないところで興行が成り立たないというわけでもなく、プレーの向上や試合の面白さという点では、「筋書きのないドラマ」の方がいいに決まっている。
ドイツのサッカーリーグ、ブンデスリーガでは、経営難に陥った親会社を持つチームを中心として八百長問題が発生した。興行面で雲行きが怪しくなると、それが選手の給料に反映され、八百長の潜り込む余地ができる。また、八百長のターゲットは選手だけには限らない。コーチや審判など、常に「弱い部分」を狙ってくるからだ。「モラル」の問題だけで片づけるには難しい部分も出てくる。誰が八百長を望んでいるか、という部分を慎重に探り、先手を打っていかないと八百長は防げないものだからだ。
台湾球界も日本球界も、運営面で今後は厳しい状況が続くと思われる。そんな中、国際スポーツとしての野球の水準を保つためにも、是非野球には、一部のヨーロッパサッカーやボクシングなどに見られるような、つまらない八百長興行は断固として排除してもらいたいものである。
【台湾野球】八百長はなぜ起こるのか(1)→
【台湾野球】八百長はなぜ起こるのか(2)→