ドイツやイタリアなどの海外サッカーや、日本のボクシング界などにおいて、八百長事件や八百長疑惑が頻発している。かつて台湾プロ野球を揺るがせた事件を通して、八百長の根幹を探る。

馳星周の『夜光虫』は本当か?


馳星周著『夜光虫』 。台湾野球の裏世界とのつながりを、下り坂日本人プロ選手を通して描く
私が「台湾プロ野球の取材を続けている」と言うと、時折聞かれる同じ質問がある。それは「馳星周の小説『夜光虫』に登場する、黒道(ヤクザ)が絡んだ台湾プロ野球の八百長事件って本当なんですか?」というものだ。

私はこう答える。「かなり事実ですよ」と。『夜光虫』のストーリーはこんな感じだ。 以下、「BOOK」データベースから引用する。


かつては神宮球場のヒーロー、プロ野球の世界ではノーヒットノーランを達成。加倉昭彦は栄光に彩られた野球人生を全うするはずだった。しかし肩の故障が彼を襲う。引退、事業の失敗、離婚、残った莫大な借金。加倉は再起を賭け台湾プロ野球に身を投じる。それでも将来の不安が消えることはない。苛立つ加倉は台湾マフィアの誘いに乗り、放水―八百長に手を染めた。―交錯する絆と裏切り。揺れ動く愛と憎。破滅への道しか進むことのできない閉塞状況のなかで解き放たれていく狂気…。人間の根源的欲望を描き切ったアジアン・ノワールの最高峰。


馳星周は台湾プロ野球の事情通にかなり綿密な取材を行い、また台湾現地のこともよく調べている。特に最初の方に登場する、選手がヤクザに拉致され拳銃を突き付けられるシーンなどは、実際台湾プロ野球であった事件を下敷きにしたもので、事情を知っている人間からすれば、「ああ、あれは呉復連の事件だ」とすぐさま連想できるものである。

またもちろん、登場人物立てやストーリー自体は完全にフィクションなのだが、台湾の裏社会や賭博・八百長のカラクリはかなり実際の構造に近い。それでは、私が見てきた台湾プロ野球の賭博事件やその構造について説明していこう。

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