野球/野球関連情報

『マネー・ボール』を検証する(2ページ目)

2000年から4年連続地区優勝を成し遂げたオークランド・アスレチックス。そのチーム編成の中心人物、ビリー・ビーンGMを描いたベストセラー、『マネー・ボール』における野球戦略を検証する。

執筆者:コモエスタ 坂本

マネー・ボール「理論」の実際


では、マネー・ボールにおける当時のアスレチックスの戦略を、本から読みとれる限りで記していこう。

まず攻撃側では、打点などの「偶然性」に左右される指標を軽視し、もっぱら出塁率や長打率を重視する。出塁率という意味では、四球を選ぶことや選球眼に重きが置かれている。その反面、盗塁やバント・エンドランなどは、アウトを与えるリスクとリターンから、全くと言って考慮に入れられない。実際の試合では、これらの戦法は積極的に回避される。

また、守備力さえもあまり考慮されない。出塁+長打での得点に比べ、守備による失点は無視できる数値だというのがその理由だ。また、守備記録(エラー等)も、選手個々の守備能力を反映しているわけではないと切って捨てる(守備範囲の広い選手ほど、守備機会も多いがエラーも多いというケースなど)。

次に投手では、自分で防ぐことのできる与四球、奪三振、被本塁打などの指標は重要視されるが、被安打は殆ど省みられない。「ヒットは偶然の産物であり、防げない」という極端なセオリーによるものだ。

そしてこれらに基づいて、統計学的手法により導き出された指標により、アスレチックスは選手のパフォーマンスを評価する。結果的に、他球団の採用する従来評価とは大きく異なるが、アスレチックス戦略の中ではよく働く、コストパフォーマンスのいい選手を他球団やドラフトから得ることができたのだ。

「得点公式」の検証


ここで一つ、『マネー・ボール』の中にある公式を検証してみよう。チームのシーズンにおける予想得点だ。以下の簡単な公式で、あるチームが1シーズンにどれだけ得点できるかを予想するというものだ。

予想得点数=(安打数+四球数)×塁打数÷(打数+四球数)

この公式を、2005年のパ・リーグにあてはめてみよう。次のような結果になった。

【2005年パ・リーグシーズン予想得点と実際】→
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます