球団の新規参入について
Q.球団がNPBに新規参入するためには何が必要ですか?A.参入希望企業が「入れて」と言うことと、誰かが「いいよ」ということが必要です。「入れて」というのはNPBへの新球団加盟申請です。「いいよ」という側は、現在のところまだ確立されていません。根来コミッショナーが提案した『新規加入球団審査委員会』と『プロ野球有識者会議』が現実化すれば、参入資格の審査はそれらの機関で行われることになるでしょう。現行の野球協約では、その後『実行委員会』と『オーナー会議』の承認を必要とします。参入資格審査ではおそらく、親会社の企業規模・野球チームそのもの・本拠地・本拠地球場等が問われることになると思われます。
Q.現在新規参入を表明したライブドア・楽天・シダックス以外で新規参入を表明する企業は出てくるでしょうか?
A.参入したい企業はいくつかあるようですが、球界再編や参入希望企業の動向を見ているようです。今の流れですと、今年中に手を挙げる企業はもう出てこないかもしれません。
ライブドア
Q.ライブドアはどういう会社ですか?A.いわゆるホームページ製作・ITシステム製作からスタートした会社で、総合ポータル化を目指している途中の会社で、東証マザーズ上場企業です。現在の売上・利益の多くはファイナンス事業で賄っています。直近の連結中間決算(半年)では、売上80億円、経常利益21億円でした。詳しくは公式サイトをご覧ください。
Q.実際のところ、ライブドアは何を考えているのですか?
A.M&Aで成長した企業ですので、近鉄買収もM&A的に考えていたのでしょう。野球ビジネスはIT企業にとって、記事やデータのデジタル化等で、コンテンツとしての魅力があり、またインターネット上の物販も期待できます。さらに、企業名を球団に冠することができれば、宣伝効果も高いと思われます。
ライブドアは経営上、引くに引けなくなった部分があるので、球団設立は真剣に考えていると思われます。ライブドアは「走りながら考える」タイプの経営者・企業なので、ハリボテでもとりあえず作るスピードはあるでしょう。しかし、社会人野球等の母体や球団経営のノウハウがないので、選手やスタッフ等の人材確保には苦労しそうです。
Q.ライブドアが仙台をフランチャイズとする方針を発表していますが、問題はありますか?
A.問題はありません。東北地方は現在プロ野球の本拠地が不在なので、ちゃんとした球団であれば今のパ・リーグ各球団並みの観客動員は見込めるでしょう。また、本拠地球場を予定している県営宮城球場も老朽化はしていますが、県側が改修を考えているようです。ただ、ライブドアは当初、近鉄買収・大阪(ドーム)本拠地を予定していたため、バファローズファンの不興を買うことは必至でしょう。
Q.ライブドアは球団運営を長く続けるでしょうか?
A.わかりません。少なくとも数年中には撤退しない方針のようですが、それ以前に本体の経営が悪化し、撤退を余儀なくされる可能性があります。ライブドアは急成長を遂げた会社ですが、本業不在と言われるように、必ずしも経営基盤が安泰なわけではなく、企業規模もそう大きくはありません。球団は2~3年での黒字化を見込んでいるようですが、一からのスタートでは想像以上にコストがかかり、本業の利益を逼迫すると予想されます。
ライブドアはM&Aとファイナンス・株価政策で会社を大きくしてきましたが、既にその成長に翳りも見えてきている部分もあります。500億あると言っていた現金は、大部分が公募増資により一般投資家から集めたものですが、現在株価が長期低落傾向で公募増資時の価格を割り込んでおり、多くの株主に不信感を抱かれています。もし球団設立・経営等の立ち上がりで失敗すれば、一気にアウトの可能性もあると思います。
楽天
Q.楽天はどういう会社ですか?A.楽天市場というECサイトをコアとした、総合ポータルサイトを運営する会社で、ジャスダック上場企業です。企業規模はライブドアの倍程度といったところで、現時点では中心事業が安定はしています。また、Jリーグのヴィッセル神戸の親会社でもあります。直近の連結中間決算(半年)では、売上206億円、経常利益73億円でした。詳しくは公式サイトをご覧ください。
Q.実際のところ、楽天は何を考えているのですか?
A.わかりません。ライブドア同様に企業広告としての価値、またITビジネスとの連繋を考えているとは思います。Jリーグのヴィッセル神戸を買収した際や今夏には、プロ野球経営には携わらない旨を明言しており、ここに来ての急な参入表明の真意は不明です。 新興IT企業ですので、長期的にはどうなるかわかりませんが、現在のところ本業は高収益型のビジネスを展開しています。赤字子会社を持ちたいという含みもあるかもしれません。
Q.楽天が参入した場合、本拠地はどうなりますか?
A.ヴィッセル神戸と同様に、三木谷会長の縁故地である神戸のグリーンスタジアム(ヤフーBBスタジアム)を本拠地としたいようでしたが、オリックス(新球団)とバッティングするため、神戸に強くこだわらない方針に転換するようです。
オリックス・近鉄が合併した場合、大阪ドームが使えるのですが、大阪ドームは使用料が高いため、オリックス・楽天側ともにババを引きたくないというのが本音でしょう。楽天が神戸以外で本拠地を選定するとなると、候補地選びはこれからです。
シダックス
Q.シダックスはどういう会社ですか?A.社員食堂や給食、レストランなどのフード関連企業で、カラオケレストランのチェーン展開もしています。また、社会人野球のシダックス野球部を保有しています。ジャスダック上場企業で、直近の連結決算(1年)では、売上1409億円、経常利益44億円でした。詳しくは、公式サイトをご覧ください。
Q.シダックス野球部はどういうチームですか?
A.歴史は10年ちょっとと古くはありませんが、ここ10年で都市対抗野球6回出場の強豪チームとなりました。元阪神監督の野村克也氏をGM兼監督に招聘した2003年は都市対抗野球で準優勝し、2004年はベスト8でした(優勝した王子製紙に準々決勝で敗れる)。
現在のチームは、エース野間口とキューバ人野手のキンデラン・パチェコを中心とするチームです。シダックス野球部は以前からキューバと交流があり、キューバ人監督・選手を受け入れています。
Q.シダックスはプロ参入の意志はあるのでしょうか?
A.シダックス野球部の野村監督が焚きつけた部分もあるようですが、志太会長の参入の意志は大いにあると思われます。社会人野球部を持っているとは言え、新規の選手確保や本拠地選定・球団経営等にはまだまだハードルが高いことを理解しているようで、球界再編等の流れを慎重に見極めているようです。参入条件緩和や新規参入歓迎の姿勢が明確になった場合、NPBに対して正式に加入申請する方向でしょう。
Q.シダックス野球部がプロ参入する場合、選手はそのままプロ化するのでしょうか。
A.現行の野球協約では、ドラフト会議による指名の後、選手をプロチームに入団させる形でしか選手をプロ化することはできません。また、ドラフト会議によってシダックス野球部の選手を他球団に獲得されることも回避できません。特にエースの野間口は巨人による指名が確実視されています。現有勢力をそのままプロ化したいのであれば、野球協約の改正が必要になります。さらに、現社会人野球部選手である個人の意志の問題もあります。社会人野球を廃止し、プロ化する場合、プロを希望しない選手の対処を考えないといけません。
また、現野球部がそのままプロ化しただけでは、戦力的に他球団からは見劣りがします。他の新規参入希望球団にも言えることですが、相当の戦力補強をしないとペナントレースで戦えるチーム、また一軍と二軍を保有する球団にはなりません。
Q.シダックスが参入した場合、本拠地はどうなりますか?
A.現在のシダックス野球部は東京都調布市ですが、志太会長の出身地である静岡草薙球場を本拠地化することが野村監督によって提案されています。しかしあくまでも案のレベルであり、静岡を本拠地とした場合の観客動員や地元のバックアップ体制、また草薙球場の立地や設備には疑問符がつきます。
【PART3 コミッショナーについて】→