移籍金撤廃でメリットを享受する選手側
Jリーグが今オフから、選手の移籍金を撤廃することになった。選手協会側が求めてきたもので、ゴールデンウィーク明けにも正式に決定する見込みだという。そもそも、移籍金とは何か。Jリーグにおける移籍金とは、ある選手が移籍をする際に、それまで所属していたクラブ(現所属先)に対して、移籍先のクラブが支払う金額のことを指す。“引き抜きの代償”とでも言えるだろうか。
金額は一律ではない。選手の基本給に移籍係数を掛けた金額が移籍金となる。移籍係数は年齢が若いほど高く、満29歳の選手まで設定されている。満30歳にならないと、移籍金なしで移籍することはできないというのが現行のルールだ。
移籍金が設けられてきた最大の理由は、若くて有望な選手の引き抜きや横取りを防ぐためだ。資金力のあるチームに戦力が集中しないようにするためのルールと言っていい。プロ野球の巨人のようなチームを作らずに、できるだけ拮抗した戦力のもとでリーグ戦を開催しようという考えが出発点となっている。
こんな疑問を持つ人がいるかもしれない。所属チームなしになれば、移籍金はかからないはず。ということは、現所属先と契約が切れたあとで、つまり意図的に浪人となったところで新しい契約を結ぶという抜け道は存在するのではないか──。
ここもキッチリとフタがされている。契約が満了した選手についても、30か月以内であれば移籍金が発生するというのが日本のルールなのだ。ダダをこねて所属元と契約を延長せず、別のチームへ移籍するという逃げ道は絶たれてしまっているわけだ。
ヨーロッパではすでに、契約期間を満了した選手には移籍金が発生しない。これにより選手は契約満了の6か月前から他クラブと交渉をしたり、新しい契約を結ぶことができる。シーズンを通じて移籍や契約の話題があがるのはそのためだ。
つい先日も、レアル・マドリー(スペイン)所属のイタリア代表DFファビオ・カンナバーロの去就が、スペインとイタリアのメディアで大きく報じられた。ドイツの一部メディアが、フランクフルトの稲本潤一が古巣のガンバ大阪からオファーを受けたと報じたのも、稲本とフランクフルトの契約が今シーズン限りだからである。
移籍金が撤廃されると、選手側がより多くのメリットを享受することになる。契約満了とともに自由にクラブを選ぶことができるし、移籍金がかからないので海外移籍も容易になる(あくまでも可能性の問題だが)。
そうやって選手の動きが頻繁になれば、リーグが活性化する。古巣対決や因縁対決といったようなわかりやすいゲームの見どころが増える。高額移籍金でチームを変えた選手が登場すれば、それだけで話題性は豊かだ。マスメディアへのサッカーの露出をアップさせる意味でも、活発な移籍にはメリットを見出すことができる。