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サッカーの得点には法則がある!

スポーツのデータと言えば、まず思い浮かぶのは野球だろう。チーム成績も個人成績も数字で整理されているが、サッカーにもさまざまなデータがある。ゴールデンウィーク中の観戦を充実させるデータを、紹介していこう。

戸塚 啓

執筆者:戸塚 啓

日本代表・Jリーグガイド

勝負強さは残り15分以降にあらわれる 

どの時間帯に、どこで、どんなシュートを打っているのかに注目すれば、スタジアムでもテレビの前でも、納得できるはずだ

どの時間帯に、どこで、どんなシュートを打っているのかに注目すれば、スタジアムでもテレビの前でも、納得できるはずだ

ゴールには法則がある。

たとえば、得点が生まれやすい時間帯だ。8節終了現在のJ1リーグで記録された197得点を、15分ごとに6つに分類してみる。もっとも多くの得点が生まれているのは、後半76分以降である。全体のほぼ4分の1に相当する46ゴールが、この時間帯に集中しているのだ。

試合時間の経過とともに、選手は肉体的にも精神的にも消耗度が増していく。認知と行動にズレが生じたり、集中力が低下したりする。心身がフレッシュな状態なら起こり得ないミスや、相手選手へのプレッシャーの距離が遠くなったりする。そうした変化が顕著となるのが、76分以降なのだ。

ここまでリーグ最多の20ゴールをあげている横浜F・マリノスは、76分以降の得点がJ1全18チームでもっとも多い。リスタートからの得点が多いことと並んで、開幕から6連勝を記録した一因にあげられる。

F・マリノスには、経験豊富な選手が多い。日本代表で長く活躍してきた中村俊輔(34・カッコ内は年齢)や中澤佑二(35)、さらにはブラジル人選手のマルキーニョス(37)やドゥトラ(39)が、攻守にわたってチームを引き締めている。相手チームが見せるわずかなスキを、彼らは察知する。ミスとは呼べないような小さなきっかけを、チームとして得点へ結びつけることができているのだ。

シーズン序盤の主役となっている大宮アルディージャは、76分以降の得点が「4」である。数字としてはさほど多くないが、このチームは76分以降の失点が少ない。1節の清水戦、3節の新潟戦でこの時間帯に失点し、引き分けに持ち込まれたことを教訓として、その後は76分以降に失点を許していない。4節から8節にかけては、J1でのクラブ記録となる5連勝をマークしている。

スポーツの世界では、『勝負強い』という表現がしばしば使われる。サッカーにおける勝負強さとは、76分以降に得点を奪う、あるいは失点をしないことが、ひとつの指標となるだろう。

得点の7割以上は2タッチ以内

ふたつ目の法則は、得点をあげた選手のボールタッチ数である。

8節終了時で記録された197ゴールのうち、58%強にあたる115ゴールはダイレクトシュートから生まれている。2タッチ目のシュートは37点で、合計すると152ゴールが2タッチ以内だ。全体に占める割合は、実に77%である。

パスを受けてトラップし、シュートを打ちやすい場所へボールを置き直して……といった時間をシューターが費やすと、ゴールキーパーはシュートをブロックするための正しいポジションを取ることができる。ディフェンダーはシュートを打たせないように、身体を寄せたり足を伸ばしたりしてくるだろう。ダイレクトシュートには、守備側から時間を奪い取る効果があるのだ。

8節までに15得点を記録しているアルディージャは、3分の2にあたる10点がダイレクトと2タッチによるものだ。シュートを打つ選手は、ダイレクトでボールに合わせられるポジションをとっている。ラストパスを出す選手は、ゴール前に走り込む味方選手がトラップをせずにシュートできるパスを供給している。ダイレクトシュートによる得点は、チームと個人が丹念な準備をしている成果なのだ。

得点が決まりやすい位置はどうだろうか。ひとつの目安となるのは、ペナルティエリアの内側か外側か、である。

F・マリノスがあげている20ゴールのうち、14点がペナルティエリア内である。ペナルティエリア外から流れのなかで決めたシュートは、わずか1点しかない。

アルディージャのデータも、ペナルティエリア内の得点率の高さを示す。全15得点のうちPKを除く9ゴールが、ペナルティエリア内からなのだ。

ゴールを守るという視点に立つと、ペナルティエリア内からシュートを打たせないことが、失点を防ぐ重要な条件となる。被シュート数が多くてもペナルティエリアの外側からならば、そのチームの守備は大きな危機に面していない、と見なすことができる。

個人のピッチングやバッティングが点数にダイレクトに反映されていく野球と異なり、サッカーはデータで割り切りにくいところがある。それでも、法則化できる部分はある。どの時間帯に、どこで、どんなシュートを打っているのかに注目すれば、スタジアムでもテレビの前でも、「ああ、なるほどね」と納得できるはずだ。
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