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日韓W杯のMVPカーン 正GK落選のワケ(2ページ目)

2002年、鬼気迫る闘志で主将としてチームを牽引。下馬評の低かったドイツを決勝にまで導き、GKとして初のW杯MVPを獲得したカーン。自国で開催される今年のW杯で、彼の姿を見ることはもうできないのだろうか……。

執筆者:斉藤 健仁

優勝を左右する(!?)クリンスマンの決定

カーンは再びW杯の舞台に返り咲くことがあるだろうか…(© www.fcbayern.t-com.de)
GKは、特に経験が重視されるポジションであるため、選手生命が比較的長く、1982年のスペイン大会優勝時の主将イタリアのディノ・ゾフのように、40歳くらいまで現役を続ける選手もいる。そのため、GKとして最も脂がのる時期は30歳を過ぎてからとも言われている。現在ブラジル代表とACミランで守護神を務める32歳のヂダもその1人だ。1998年、2002年と2度のW杯出場を果たしているが、セレソン(ブラジル代表)の正GKとなったのは、2003年、つまり、ACミランがユベントスとの死闘の末PK戦を制してビッグイヤーを獲得して以来である。

また、フィールドプレーヤーと違って、交替がきわめて少ないのがGKのもう一つの特徴であろう。それゆえに世代交代が難しい部分もある。21歳から代表の正GKとして君臨するジャンルイジ・ブッフォン(ユベントス)擁するイタリアは、計算上少なくとも15年は他の選手がそのポジションに取って代わることは至難の業とさえ言われている。

だが、2000年の欧州選手権では、そのブッフォンの故障に代わって出場し、神がかり的なセーブを見せたフランチェスコ・トルド(インテル)が大活躍した。2002年日韓大会直前のサンチャゴ・カニサレス(バレンシア)の負傷により正GKの座を確保したイケル・カシージャス(レアル・マドリー)のように、怪我や不調がきっかけでチャンスを手にする場合もある。だが、なかなかチームのGKを変えることは、監督にとって難しいことであろう。

今回のドイツ代表の場合、すべて本大会までの調整のための親善試合だったこともあり、このような正GK争いを行うことができたのだろう。ただ、カーンと若手選手とではなく、長い間カーンの陰に隠れてきた同じ年のレーマンに挑戦権を与えたのは、代表主将経験のあるクリンスマンらしい発想ではなかろうか。不遇の時代を重ねた後、前イングランド代表GKのデビット・シーマンの後継として、アーセナルで開花した遅咲きGKレーマン経験は、きっと現在の若い代表チームにプラスになると考えたのかも知れない……。

「大変驚き、失望している。私の代表としての身の振り方は、ブンデスリーガでのシーズン終了後にでも改めて考えたい」とバイエルンの公式ホームページで引退も示唆するような発言をしたカーン。翌日のブレーメン戦で3失点とそのショックは相当のようである。

ソ連のヤシン以来GKとして史上二人目のバロンドール受賞もささやかれたこともある、完璧主義者のカーン。「正GKの座を得られないなら、代表を引退する」と公言していたとおり潔く引退をするのか。それとも第2の男の座を甘んじて受け入れて、かつてのトルドやカシージャスのように捲土重来を期すのか。はたまた、8年の月日を賭して、いよいよマンシャフト(ドイツ代表)の守護神の座を手にしたレーマンがビッグイヤーを獲得し、それを手土産に母国のW杯のピッチで八面六臂のセーブを見せつけるのか。とにかく、地元開催、そして統一ドイツとして初のW杯優勝の栄冠に輝くためには、GKのスーパーセーブが欠くことはできない。
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