文章:橋本 誠(All About「アート・美術展」旧ガイド)
絵画や彫刻など、アートはしばしばその形態によって様々な言葉でジャンル分けされますが、皆さんはメディアアートという言葉をご存じでしょうか。メディアアートとは、ビデオやコンピュータ技術をはじめとするテクノロジーに触発され生まれた芸術作品のことを一般的にさしています。
多くのメディアートにふれることができるNTTインターコミュニケーション・センター[ICC]に展示されている作品を例にご紹介していきましょう。
テクノロジーと観客のアクションが融合
「岩井俊雄「マシュマロスコープ」2002年 |
こちらの作品、岩井俊雄による「マシュマロスコープ」のキーワードは映像です。
作品は一見、彫刻作品のように見えるのですが、このかわいらしいマシュマロのような形をしたオブジェには、向こう側の風景をのぞきみることができる窓がついています。近づいて窓をのぞいてみるとその風景の様子がなにやらおかしいことに気がつくでしょう。窓に映る風景は、時間が行きつ戻りつ変化したり、うつる人物などがゆがんで見えたりするのです。
この作品は、窓の向こうにうつる風景をビデオカメラを通じてコンピューターに蓄え、ビデオカメラで撮影された映像の空間と時間をリアルタイムに操作し、変形させています。私たちはこの作品を通して現実の世界と、ここではないもうひとつの世界の存在を感じることができるでしょう。
このように映像表現のテクノロジーは、時間軸や空間に関する新たなインスピレーションをアーティストに与えることになりました。
また、この作品を始めとしメディアアートの特徴のひとつとして、鑑賞者自身が作品に何らかのアクションを働きかけ、作品または他の鑑賞者とコミュニケートしながら楽しむことができるという点が挙げられます。
次のページでは、人間の知覚や最新の技術を利用したメディアアートをご紹介します!