文章:橋本 誠(All About「アート・美術展」旧ガイド)
ポップ・アートの代名詞
アンディ・ウォーホルは、マリリン・モンローやキャンベルスープの缶など大衆社会に溢れているイメージをシルクスクリーンにより作品化した |
彼を筆頭にして、1960年代に台頭したポップ・アートは、欧米の大量生産、大量消費社会の時代イメージをそのままに表現し、瞬く間に世界に広がりました。
「巨匠で見るアート」シリーズ、第3回はアンディ・ウォーホルとポップ・アートを取り上げたいと思います。
大衆社会にテーマを求めたポップ・アート
「ポップ・アート」という言葉は、大衆社会における文化や芸術という意味から「ポピュラー・アート(大衆芸術)」を語源としています。それまでの芸術は崇高なものである、という既成概念を根底からひっくり返し、漫画(コミック)、スーパーマーケットの紙袋、映画のスチール写真など大衆社会の世俗性にテーマを求めました。最初にこのようなポップアート的な試みが見られたのは、1950年代のイギリスだと言われており、リチャード・ハミルトン(1922年-)の作品《一体なにが今日の家庭をこれほどまでに変化させ、魅力的にしているか》(1956年)などがその代表的な例として挙げられています。
一方、1950年代末のアメリカでは、ジャクソン・ポロック(1912-1956年)らに代表される抽象的な絵画表現(抽象表現主義)が主流を占めていましたが、既製品をそのまま使用して芸術としたレディメイド(※)の手法などの影響を受けて、既製の日用品や廃物などを使って作品を作る「ネオダダ」と呼ばれる動きがそれらと対抗する形で存在していました。これがポップ・アートへの動きとつながっていきます。
※前回記事「20世紀最大の問題児!? M・デュシャン」を参照→>>こちらから
この間のアメリカは、戦後の好景気により経済力を高め、大量生産・大量消費による市場の動きが拡大していきます。映画や漫画、音楽などの大衆文化も頂点に達していこうとする中で、1960年代にアンディ・ウォーホル(1928-1987年)やロイ・リキテンスタイン(1923-1997年)らが登場し、ポップ・アートが一気に開花します。
次のページでは、ポップアートの代名詞であるウォーホルの作品を紹介します!