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季節感たっぷり、「春」を感じるアート!

心躍る春。そんな季節にぴったりのアーティーストと作品をご紹介します。

執筆者:橋本 誠

文章:橋本 誠(All About「アート・美術展」旧ガイド)

春を感じさせるアートをご紹介!

心躍る春──。美術館やギャラリーに向かう足取りも軽くなります。お花見もいいですが、アートにだって春はある(!?)ということで、今回は季節感たっぷりのアーティストと作品をご紹介したいと思います。

ご紹介するのは、縫い目の中に軌跡を描く秋山さやかさん(1p目)、コンピュータ処理を用いて花などのイメージを描く森本太郎さん、「バスタブ」と印象的な光を描く曽谷朝絵さん、伝統的な手法を応用して植物などを描く岩野仁美さんです。

縫い目の中に軌跡を描く秋山さやかさん

あるく 私の生活基本形 ―上海
「あるく 私の生活基本形 ―上海 2005年5月12日~24日」
素材:ししゅう糸、もめん糸、毛糸、リボン、テープ、スパンコール、ボタンなど・ユニパフィルムにコピープリント
サイズ:170cm×190cm(写真は部分)
制作年:2005年(中国)
秋山さやかさんは、様々な土地で、歩いた軌跡やその時の出来事や心に残った事などを糸やいろいろな素材を用いて表現している美術作家です。支持体(※)には、歩いた土地の地図(地図をプリントした布や紙)が用いられることも多く、添えられた日記の様な詩の様な言葉と共に、その時の出来事や彼女の気分を、糸の生み出す色の流れの中に思い描いて楽しむことができる作品です。
※ 平面作品の基盤となるキャンバスなどのこと

作品「あるく 私の生活基本形 ―上海 2005年5月12日~24日」は、地図がプリントされた半透明の素材に縫い目が浮かび上がっています。タイトルに基本形とありますから、秋山さんが上海に滞在している期間によく辿った道を表しているのでしょうか。糸の縫い筋をよく見てみると、道を間違えたのか引き返したりしているようにも見えるところがあったりして、面白いですね。

スパイラルをあるく
「スパイラルをあるく ―2003年4月9日~4月21日」
素材:ししゅう糸、もめん糸、毛糸、リボン、テープなど・ラッピングペーパーにシルクスクリーン
サイズ:57cm×81cm(写真は部分)
制作年:2003年(青山/東京)
こちらの作品には、下記のようなテキストが添えられており、建物の中での様子を表した作品のようです。

スパイラルビルでの私と、
そこで出会った人々のうごき。


秋山さんだけではなく、ビルの各フロアでの、様々な人の動きが感じられてにぎやかな様子です。

バロー・イン・ファーネスとアゥバスタンをあるく
「バロー・イン・ファーネスとアゥバスタンをあるく ―2004年6月28日~8月25日」より「7月19日」
素材 : ししゅう糸・もめん糸・毛糸・リボン・絵の具・顔料・ペン・紙・手漉き和紙 など
サイズ:22X27.5 cm(27点組のうちの一点)
制作年:2004年(イギリス)
最後にこちらの作品。地図ではなく、彼女自らの手で漉いた紙へ縫い込まれており、先の作品に比べると抽象的です。作品には下記のような言葉が添えられています。

7月19日
フラットの庭で紙すきの下ごしらえ。
子供達が ニッフィーという犬と遊んでる。  
はじめは互いに距離をとってたけれど、徐々に近付く。

シャーという女の子は いっぱい喋ってくれるけれど、
私は一生懸命聞き取ろうとするけれど、耳の外へこぼれてゆく。
シャーの髪は絹糸よりやらかい。
弟のサムの目は夜のように黒い。


秋山さんがイギリス滞在中に庭で制作の準備をしていたときの出来事のようです。何となくその時の3人の様子が伝わってきますね。

どの作品も、色とりどりの糸の軌跡を目で追うのが楽しく、また見ているだけで私たちもその場所へ出かけたような気分になります。
普段私たちが当たり前に行っている「あるく」という行為―。秋山さんのように、改めてかみしめながら春の散歩に出かけるのも面白いかもしれません。

All Photograph by Hideto NAGATSUKA



【秋山さやか(Sayaka Akiyama)】
美術作家。
1971年兵庫県生まれ 神奈川県在住/ 多摩美術大学絵画学科油絵科非常勤講師
ストックホルム、ニューヨーク、モンフランカン(フランス)、バロー イン ファーネス(イギリス)、上海等々……
国内外のさまざまな土地を巡りつつ、作品を制作、発表している。
また、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」2005春夏コラボレーション、流行通信創刊500号記念 特別企画「PRADAとアーティストとの誌上コラボレーション」等、ファッション系とのコラボレーションなども経験。

■受賞
1999年 第4回アート公募 画廊企画賞受賞
2000年 フィリップモリスアートアワード2000 大賞受賞
2001年 ダイムラー・クライスラーグループ アート・スコープ2001受賞

■主な個展
2000年 「第4回アート公募・画廊企画賞展」ギャラリー ル・デコ(東京)
2004年 「あるくー私の生活基本形 バロー・イン・ファーネスとアゥバスタン」Art Gene ギャラリー(バロー イン ファーネス・イギリス)
2005年 「代官山をあるく」AITルーム(東京) 
2006年 「あるく 時間のあしあと」 高橋コレクション(東京)

■主なグループ展
2000年 「THE J-WAY」リドマールホテル(ストックホルム・スウェーデン)
2001年 「The First Steps」グレイ・アートギャラリー(ニューヨーク・アメリカ)
2002年 「混沌から躍り出る星たち2002」スパイラルガーデン(東京)
      「JOSHIBI NEW WAVE Part.2」女子美アートミュージアム(神奈川)
2003年 「VOCA展2003」上野の森美術館(東京)
      「art-life vol.1 秋山さやか/MOTOKO展 speed&slow」スパイラルガーデン(東京)
      「TRAVERSE」サントル・ダ―ル・アン・イル、ヴィラ・デュトワ(ジュネーブ・スイス)
      「アート・スコープの12年展」 原美術館(東京)
      「City_Net Asia Project」 ソウル市美術館(ソウル・韓国)
2004年 「六本木クロッシング2004日本美術の新しい展望」森美術館(東京)
      「Art Scope DaimlerChrysler Japan」(ベルリン、シュツットガルト・ドイツ)
2005年 「上海Youth ビエンナーレ2005 Vision Express“Vision Express International”」Ming Yuan Culture Center (上海・中国)

■今後の予定
◆Air Do 機内誌「RAPORA」リニューアル創刊 第一弾の表紙とポスターの為の作品を担当(2006年4月号)

◆伊勢丹とVOGUEのコラボレーション企画「VOGUE MEETS ISETAN ! Part5 “WHITE GALLERY”」に出品
(伊勢丹新宿店本館の1階内ウィンドウにて/2006年4月5日~18日)

◆ベルリン新国立美術館にて開催される「東京─ベルリン/ベルリン─東京」展に出品
(2006年6月/ドイツ)


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