アート・美術展/アート・美術展関連情報

季節感たっぷり、「春」を感じるアート!(2ページ目)

心躍る春。そんな季節にぴったりのアーティーストと作品をご紹介します。

執筆者:橋本 誠

コンピューター処理を用いて花などを描く森本太郎さん

ミラノの花 #3
「ミラノの花 #3」
素材:アクリル絵具,油彩,キャンバス
サイズ:91.5×62.8cm
制作年:2003年
flowers
「flowers」
素材:アクリル絵具,油彩,キャンバス
サイズ:80.9×59.5cm
制作年:2003年
森本太郎さんは、コンピューター処理を用いて花や人物などを描いています。まずは雑誌やチラシの写真などからイメージをコンピューターに取り込み、自動選択ツール(※)などを用いて極限まで同系色の部分を均一化します。その結果をキャンバスに写し取り、アクリルや油絵の具を用いて最終的な彩色が施されます。
※画像のある部分に近い色や範囲をまとめて選択する機能

ここで特徴的なのは、均一化されたそれぞれのブロックを隔てる、モチーフのエッジの部分が隆起していることです。これは粘りを強くした画材で、製菓用の絞り袋を用いて描かれるそうです。ひと目で森本さんの作品だということが分かりますね。

右の2点の作品はどちらも花のイメージを用いていますが、そのようなプロセスを経て制作されたこともあり、実際の花の造形色からはかけ離れています。かといって人の手でただ単純化されたイラストとも全く違う、どことなく自然に近いイメージも含んでいるように感じられるのが不思議です。穏やかな春の陽気を感じながら見たい作品です。
elle
「elle」
素材:アクリル絵具,油彩,キャンバス
サイズ:65.2×53.0cm
制作年:2005年
こちらの作品は、スカートを履いた女性のイメージのようです。女性の肌と背景の色が近かったのでしょうか。足の一部分が背景と同化してしまっています。

デジタルツールを用いて制作され、その手順次第ではいかようにも変化してしまいそうな森本さんの作品。一見すると、時代を反映した主体性の弱さを連想させますが、画面の中で唯一その存在を主張しているエッジには、彼の意識のようなものを強く感じることもできます。森本さんは、様々なテクノロジーをただ受動的に用いた訳ではなく、ある一線を設けつつも、積極的に受け入れながら制作を行っているのかもしれません。



【森本太郎(Taro Morimoto)】
1969年、岡山県倉敷市生まれ。東京造形大学研究生(岡村多佳夫研究室)修了。
日々の生活の中にあるイメージを基にコンピュータで加工した後、アクリルや油彩を使って作品を制作している。

■受賞
1994年 第1回東京デザインセンター新人賞・銀賞
1994年 JACA'94日本ヴィジュアル・アート展金賞
1995年 JACA'95日本ヴィジュアル・アート展入選
1996年 JACA'96日本ヴィジュアル・アート展特別賞

■主な個展
2001年 「recollection」アユミギャラリー(神楽坂)
2002年 「reminder-記憶の連鎖-」Space Kobo & Tomo(銀座)
2003年 「souvenir-物質と記憶-」アユミギャラリー(神楽坂)
2004年 「残像-after image-」アユミギャラリー(神楽坂)
2005年 「project N 23 森本太郎」東京オペラシティアートギャラリー(初台)
      「painting /embroidery」Space Kobo & Tomo(銀座)

■主なグループ展
1996年 「岡村多佳夫企画 I 佐野陽一・森本太郎二人展」アユミギャラリー(神楽坂)
1998年 「寿限無'98世紀末複製事件 -ART BY XEROX-」現代美術製作所(東向島)
1999年 「岩崎容子・佐野陽一・森本太郎三人展」ギャラリー檜(銀座)
2002年 「「点線」東京デザインセンター新人賞の進行形展」東京デザインセンター(五反田)
2003年 「ARTISTS BY ARTISTS」森アーツセンター(六本木)
2004年 「寿限無'04 Super Multiple Art Project -ART BY XEROX-」現代美術製作所(東向島)
2005年 「REALITY CHECK」東京造形大学附属横山記念マンズー美術館(相原)

■今後の予定
◆2006年10月21日より第3回府中ビエンナーレ『美と価値』(府中市美術館)に参加予定


次のページは、意外なものを描く曽谷朝絵さんです!
  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます